8才の処世術

 今年はパピーとの出会いが増えた。ルーシーが住む町、ワンコの世代交代を迎えているのかな。
 大半が小型〜中型犬。ルーシーの姿を見ると「遊んで〜♪」と大興奮。中には興奮し過ぎて、リードに噛み付いて、ぶら下がりながら歩いている子もいる(爆)。
 一方のルーシーは、パピーのパワーに負けている。最初は、パピーに出会うと、避けるように飼い主さんの方に甘えに行っていた。それが、飼い主さんに行くことなく、接近するパピーに対して顔を背けて「私はいません」という態度をとるようになり、(あ)の背後に回りこみ逃げるようになった。
 やさぐれたルーシーでも、パピーを攻撃してはいけないことは理解しているので、我慢している。背中に乗られても、口元を噛まれそうになっても、相手を振り払うだけで威嚇も攻撃もしない。ただし経験上、パピーが絡むと(あ)の立ち話が長くなることが分かってきたらしい(笑)←どんな犬種でもパピーは可愛い。思い切りウリウリしたいじゃん!
 そして、ルーシーは最初から「気配を消す作戦」に出るようになった。パピーだと分かった途端、屈みこむ(あ)の背後に伏せて、足の間から様子をうかがっている。パピーの注意が自分に向きそうだと分かった瞬間、リードいっぱいに離れて相手にオシリを向けて伏せる。バレバレなので、オシリに突撃されて逃げ回ることに。オマエみたいにどんくさい忍者はいないと思うよ。
 そうこうしているうちに、ルーシーの態度が再び変化してきた。
 先日の朝、S田谷公園の広いスロープをルーシーと歩いていた。スロープの横にある植え込みに、見知らぬ中型犬と飼い主さん。中型犬は、なぜか桜の木の根本をお腹に抱くように伏せていた。飼い主さんはリードを持って側に立っていた。ワシらとは20mほど離れていたと思う。
 ワシらの通常のコースは、中型犬のいる方向にスロープを下る。スロープは幅が広いので、万が一、中型犬が植え込みから飛び出したとしても、ワシらには届かない。
 (あ)は普段から見知らぬワンコには注意するようにしている。この時、中型犬はリードを着用し、飼い主さんは男性で、ワシらから離れていることを確認していたし、さらに彼らから距離をとることもできる。そのまま通過できると判断してスロープを歩き続けようとした。
 ところが、ルーシーの足が止まった。
 「ん?どうしたの?」と声をかける。中型犬は、耳を立て、こちらの様子を覗っているものの、伏せたまま。
 それでも、ルーシーはその場で立ったまま、前方を見つめている。
 「ルーシー、大丈夫だよ。行くよ。」と声をかけたところ、ルーシーは命じられていないのに、サイドに自分の位置を移した。
 ハイパーな犬や攻撃的な態度を見せる犬と行き交う場合、(あ)は歩きながらコマンドを出して、ルーシーの位置を変えるようにしている。ルーシーをできるだけ相手から遠ざけて安心させ、相手を刺激させないためだ。必要に応じて、位置替えに加えてアテンションを取ることも。ルーシーが見つめることで、相手が脅威に感じてしまうケースが多いからだ。実は、ルーシーの方が怖がっているのだけど(爆)。
 距離が半分ほどに縮まったところで、相手のワンコを改めて見た。
 大柄。耳がピンと立ち、目が光っている。短毛で筋肉質。背中の毛は立っていないから、それほど興奮していない模様。体高が高そうだ。伏せ続けているから分からなかったけれど。
 初めに感じた以上に若いかも。パピーと呼ぶには大きい。足は細く、首が長くて少々アンバランス。
 う〜ん、大人になりかけ かな?
 ルーシーは、20m先のターゲットがパピーくさいと判断して、自主避難したらしい。
 こちらが近づいて通り過ぎる瞬間も、相手ワンは伏せたまま、こちらに視線を送るのみだった。ルーシーはといえば、頭を下げ、顔を背けながらこそこそと早足で立ち去る。
 こちらは内心「なっさけないなぁ〜」と呆れたけれど、口には出さなかった。これもワンコ社会ではトラブルを回避する術なのだろう。トラブルメーカーが8歳にして、ようやく学んだ処世術ということなんだろうな。
 通り過ぎた後、ルーシーはなぜか(あ)を見上げて「私、サイドしたよ。褒めて」と目で訴えてきた。
 「なんでやねん!」
 と思わず口から出た。早朝の公園で犬にツッ込む飼い主。他人に聞かれなかったけれど、どっちもどっちである(爆)。