ルーシーのスゴイ

 久しぶりに、お山の片隅にある芝生の広場へ。公園内も思いの外、人や車が多い。ルーシー地方は秋の行楽シーズンを迎えたということか。
 公園の奥の方にある芝生の広場へ。ここには元々、登山客くらいしか来ないから、平日の午後には誰もいないだろう。
 タカをくくっていたら、なんと先客アリ。
 外国人の家族連れ。
 お母さんらしい女性は、芝生広場の隅にある木陰に座り、静かに読書。子供達は、お母さんから芝生を超えた、向こう側にある岩の上。つまり、ワシらが広場で遊ぶならば、挟まれたカタチ。

 む〜、どうすっかなぁ〜?
 家族全員が、どっちか一方にいてくれるなら、彼らの反対側に行けば良いけれど。
 芝生の上だと、どこにしても挟まれてしまう。
 家族が静かにリラックス・タイムをエンジョイしているのに、その横で静寂を壊しちゃ〜イカンよな。
 あきらめて帰るか?
 でも、せっかく来たんだし、お母さんは犬の姿を見ても、子供達に何も言わなかったし。

 しばし悩んだ挙句、お母さんから一番離れた端へ移動。リードを外して少しヒールワークの練習を始めた。
 子供達は自分の遊びで何やらキャーキャー言うとったが、彼らはワシらから離れた岩の上だったので、ルーシーも、さして気にしなかった。

 ちょこちょこっとヒールワークをしてチラ見したら、お母さんはまだ読書中。
 ステップワークを少々。アウアウ声が出ちゃうようなものは迷惑だから止めた。

 お母さん、まだ読書中。
 シメシメ、見てないな。少しだけ遠隔をやってみよう。

 遠隔をしていたら、突然お母さんが口を開いた。

 「スゴイ!」

 ?!
 
 こわごわ視線を上げて見ると、お母さんは、優しい笑顔でこちらを見ていた。迷惑に怒ってる様子はない。ちょっとホッとした。その途端に恥ずかしさがこみ上げてきた。
 「いえいえ、とんでもないです」と、モゴモゴと口の中で応える。
 ふと足元を見ると、ルーシーが耳をピンと立て、大笑いで「褒められました!」と報告してきた。

 ・・・なんで褒められたと分かったんだろ?

 というのも「スゴイ」の発音が違っていたからだ。
 (あ)だって、一瞬何を言われたのか分からなかったくらいだもの。
 日本人だとアクセントが「ゴ」に来るけど、外国人の方だと「ス」に来ることが多い。
 明らかに日本語の発音じゃなかったんだけど、ルーシーには何を言われたかが分かったらしい。

 ルーシーは、元より都合の良いことは理解し、都合の悪いことは聞こえないフリをする。
 しかし普段聞き慣れた言葉ではない。「自分にとって都合が良い」から理解できるものでもあるまい?
 理屈は分らんが、ルーシーは別のところでスゴイ。
 妙なところで感心させられてしまったよ(笑)。