選択の時

 知恵熱から完全に風邪引いた。お友達のワンコは原因不明の難病と診断され、飼い主だけでなく、(あ)自身にとっても大変なショックで数日眠れなかった。その一方で、診断により、てんかんを抑える薬を飲んでいても、病気の進行は止められないことが分かった。「それだけでも検査をして良かったのだ」と自分を納得させたいところだが、やはり問題の重大性を打ち消せない。
 難病だけに治療方法の選択肢は限定される。また、どんな治療方法であっても根治は無理なので、治療は一生継続しなければならない。脳や脊髄に係わる病気なので、病院はMRI等の精密検査ができるところを選ばなければならない。
 飼い主に代わり、ネットやツテを頼って調べまくって、微かな希望の光を見出して、すがることにした。「助けてください」の訴えに、すぐに回答して、励ましていただけた。涙が出るほど嬉しかった。直ぐに飼い主に連絡した。

 ここからは、彼女自身が決めることだ。
 自分は、全く選択肢がなかったところから、選択肢を見つけて提示した。
 治療方法に関して自分が担うべき役割は、一旦ここで終わり。
 後は側面的なサポートをしよう。

 そう思ったら、いきなり風邪っぴきでダウン。バカ丸出し。
 自分のキャパを超えて無理をして、(た)やルーシーに迷惑をかけてしまうのは本末転倒だ。
 どうも必死になり過ぎるんだよなぁ。反省。

 リビングでケータイを握りしめてコタツふとんをかぶり、ぶっ倒れていたら、昔の職場の後輩からの電話に起こされた。
 「○○ちゃん、助けて〜!」
 今度は何だよ。
 「発音って、どうやって教えるの?」
 ・・・はぁ?
 娘さんがセンター試験を受ける予定なのだが、これまでの模擬試験では、英語の発音の問題で、いつも失敗してしまうのだと言う。問題は4択で「アクセントの位置が他の3つと違うものを選べ」というもの。
 「娘には『ひとつずつ、口に出して言ってみたら良いやん』って言うねんけど、アカンねんなぁ」
 一瞬「そったらことで電話して来んな!こっちは犬の病気で頭が痛いのに」と言いたかったが、ふと「これも一生の問題かも」と思い直す。
 「アクセントの位置には一定のルールがあるんやけど・・・」と言うと
 「そやねん、それは分かってるねん。単語帳も真っ黒でボロボロになるまで勉強してんねん。でも試験になるとアカンねん」と母親。
 うーん、アクセント位置を完全に理解させようとすれば、音節から語形成まで遡らんといかんわな。来週が本番なのに、今更、新しいことを覚えさせて混乱させたくないし・・・。
 「じゃ、口に出すな」
 「え?」
 「口に出さんと、映像として単語帳を思い出せ」
 「口に出して言ってる間に、デリシャスなんだかデリ〜シャスなんだか分からんようになるんやろ?」
 「はぁぁ〜、そっか〜!」と母親。
 「いや、学校の先生にはね、『どうしても分からんときは(選択肢のうち)X番を選べ!4択では、だいたい正解はX番や』って言われたらしい」
 これを聞いて大笑いした。先生も生徒を混乱させたくないんだな。

 混乱した状態で判断しても、後になって悔いることになる。
 確かに、できるだけ早く着手することが重要だけど。
 しっかり選択肢を見据えること。自分で納得して選ぶこと。
 それが肝要。