コロッケ

 所用のついでに駅前のスーパーへ。
 「晩御飯のおかずが、一品足りないなぁ」と、お惣菜コーナーを覗く。コロッケの種類が多い。牛肉、かぼちゃ、カレー味、黒豆などなど。近隣で働く人の昼ごはんかな?見れば、プラ容器にコロッケを山盛り買っている人がいる。
 「メンドクサイし、もう一品はコロッケにしよう」と決める。
 スペースが狭く、こちらが下手に動くと山盛り買いの人の身体に触れそうだった。あらかじめ「すいません」と声をかけて、プラ容器を取ろうと手を伸ばした。すると、相手が「アラ、聞いた声だと思ったら」と仰る。
 よくよく見ると、ご近所に住む大型犬の飼い主さん。マスクを着用されていたので、全く気が付かなかった。
 普段は散歩でお目にかかるだけ。その時は、こちらは大概、ルーシーが失礼をしないかと、そちらばかりに気が行ってしまう。犬抜きの相手は、あまり目に入っていないのだ。
 しかし、スーパーのお惣菜売り場で会うって。
 ・・・なぜか、ちょっとバツが悪い(爆)。
 手抜き主婦業がバレバレ〜 (^^ゞ
 「いや、たくさん買っておられる人がいるから、よっぽど、ここのコロッケが美味しいんだろうなと思って」
と言うと、相手の飼い主さんは
 「いやいや、違うのよ」と笑われ、次に声をひそめて
 「●●(ワンちゃんの名前)のなのよ」と仰る。
 「え?●●くん、コロッケを食べるの?食べて大丈夫なの?」と、思わず口から出てしまった。
 ●●くんは、このお家の2代目で、実は、先代のワンちゃんも、コロッケを食べていたそうだ。
 両方とも大型犬で体高が非常に高く、食卓上に並べた食べ物には、難なく口が届いてしまう。特に2代目の●●くんは、食卓上に自分用の食べ物がないと分かると、ものすごくスネてしまうらしい。お父さんが「可哀想だから」と、トッピング用のコロッケを買ってくるように仰るそうだ。
 「本当はダメなんだけどね」と、お母さんはバツが悪そうな表情を浮かべた。
 「(コロッケを食べていても)●●くんは、元気だし、すごくスリムだよねぇ。」
 高脂肪、高カロリーの人間用の食べ物を毎日食べていても、●●くんは、引き締まったボディを維持している。
 充分に運動させて、ケアが行き届いているからだと思う。大きな身体で、小柄なお母さんに寄り添って甘える姿は、いつ見ても微笑ましい。
 「ルーシーのためだから」「ずっと健康でいられるように」と思うばかりに、(あ)は、ルーシーに対して、さまざまな制限を強いている。
 もっと大らかに、ルーシーにも、人間との暮らしを楽しませてやれないものかなぁ。
 ルーシーが年齢を重ねるにつれ、自分でも、そう思うことが多くなった。
 昔、アニーちゃんのパパさんが「犬の一生は短いからねぇ。四角四面が、犬にとって幸せとは限らないからね」と仰っていたことを思い出す。

 確かに、そうだよなぁ。
 とはいえ、こちらがタガを緩めると、ルーシーは、図に乗って木に登るタイプだし。
 タガを緩める端緒が、なかなか見つからない(笑)。

 まぁ、我が家は我が家らしく。ルーシーが、ずっと笑顔でいられますように。