食い意地

 昨日、食い意地について書いたところ、今日はその一端を垣間見るような一件があった。朝、公園に連れて行くと、久しぶりにビーグルのモウちゃんに合った。モウちゃんは、トリマー・トレーナー育成学校の犬だそうで、飼い主さん(うら若いお嬢さん)は、そこの学生さん。モウちゃんの担当で、学校が3連休のため、自宅に連れてきたそうだ。モウちゃんとルーシーは月齢が近いこともあって、ランディ君同様、格好の取っ組み合いの相手である。
 モウちゃんのお姉ちゃん(飼い主さん)は、豚の耳を持ってこられた。ルーシーにヒヅメを与えたことはあるけれど、豚の耳は初めて。お姉ちゃんは、モウちゃん、ランディ君、そしてルーシーと、順番に豚の耳を与えた。珍しいものをもらったことで、ルーシーは独り占めしたくなったのだろう。豚の耳を加えて走り始めた。モウちゃんとランディ君は、少し追いかけたけれど、ルーシーから奪い返そうとはしなかった。それを良いことに、ルーシーは口から豚の耳を出そうとしない。私と二人きりなら有効な「アウト」の指示も、代わりにあげようと用意したフードにも、全く反応しない。リードを引っ張って、マズルをさわろうとすると、ルーシーは低いうなり声を上げた。
 「アウト」の指示を無視するようになると、異物を口にした時に吐き出させるのが大変なので、ここは正念場である。しかし、口の中にあるブタの耳を取り上げるには、首根っこを押さえつけて、口をこじあけなければならない。相手は豚の耳を取られまいと歯をくいしばり、あわよくば、こちらの手まで噛もうとする。鼻面には皺を寄せ、歯を剥いた。結構本気である。手を噛まれながらもひるまず、ルーシーの口を力づくで開き、豚の耳を取り上げた。そして、ルーシーの体をひっくり返して、目を見て、大きな声で怒る。久しぶりにルーシーは怖がった。「自分がこんなに怒られるほど、いけないことをしたんだ」と分かってくれたら良いんだけど。
 気が付いたら、ランディ君のお母さんも、モウちゃんのお姉ちゃんも、側で「引いていた」。私の剣幕に驚いたようだ。すいませんねぇ。私って猛犬以上の猛ブタなんです。ブヒ。