つまんない

 神様の気まぐれで、急に雨が降り出したり、晴れ間がのぞいたりという毎日である。晴れたといっても、いつ雨が再び降り出すか分からないので、とりあえずTシャツを着せて、ルーシーを散歩に連れ出す。4本の足を通してレインコートを着せる時間が惜しい。昨日は、ほぼ排泄だけの散歩だったので、一日家に閉じこめられたようなものだ。ストレスもたまっているだろうから、歩かせなくては。
 しかし、F公園にもS公園にも、いつも遊び相手になってくれているワンちゃんはいない。雨が止んでも地面はぬかるみだ。しょうがないから、舗装道路を歩く。ルーシーもつまらなそうである。
 偶然だが、朝は登校時間に重なったようだ。近所の中学校に通う子供達が、私たちに向かって、ぞろぞろと歩いている。そのうちの一人がルーシーを見て「可愛い」とつぶやいた。ルーシーは耳を立てて「誰?私のこと可愛いって言ってくれたのは?」とキョロキョロする。しかし、相手は全員制服を着て、同じような速度で歩いている。キョロキョロしているうちに、言ってくれた本人は通り過ぎてしまった。一団が通り過ぎても、誰が「可愛い」と言ってくれたのかが分からず、甘えることもできなかったルーシーは、道の真ん中で尻尾追いを始めてしまった。ワンちゃんに会えなかったので、その分、誰かに可愛がってもらいたかったのだろう。そういう欲求が、一番側にいる飼い主に向けられないのは不思議だけど。
 ひとしきり尻尾追いをしたところで、急にルーシーが(あ)の顔を見上げた。「ヘッ」と笑うような表情を見せ、お座りをする。「エサをくれ」ということらしい。なんだよ、それ。
 ワンちゃんと遊べず、誰にもかまってもらえない時、その次の楽しみは食べることなのだろう。「(あ)に甘える」の順番は、何番目なんだろう?