バレンタイン・デー

 ルーシーの朝夕の散歩は、登下校の時間にぶつかることが多い。ルーシーは「誰か、可愛がってくれるかしら?」とキョロキョロして、リュックを背負った小学生の背後から、わざわざ前に回り込んでは、一人一人の顔をのぞきこんでいる。
 しかし、今日はバレンタイン・デー。多くの子供達が、ルーシーにかまっているヒマはないようだ。女の子はみんな、教科書の入ったリュック以外に、手提げ袋を手にしている。
 面白いのは、女の子同士が登校中に、チョコを交換していたこと。もともとバレンタイン・デーは仲の良い友達にプレゼントを送るものらしいので、元来の風習に戻りつつあるということだろうか。
 それでも、一人の女の子がルーシーに向かって「可愛い〜」と言ってくれた。すかさずルーシーは、その子の前にお座りをして、尻尾を振る。頭を撫でられて、嬉しそうに飛びつく。いつもなら人に飛びつくルーシーだが、今日のターゲットは手提げ袋。幸い、短足のルーシーのこと、チョコは無傷だったようだが、油断できないなぁ。
 我が家ではチョコレートを買うことがない。(あ)はチョコレートを食べると、吹き出物がでるからだ。従って(た)には、バレンタイン・デーの喜びを味わったことがない。悪いけど、今年も職場でもらってね。