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 先日来、ルーシーは、大量に毛が抜けている。そして、その勢いは留まることを知らない。これまでに、おそらく小型犬一匹分くらいの毛は抜けたと思われるが、本人は依然毛むくじゃらのままだ。
 今日の夕方から、また雨模様の天気が続くと聞いたので、昨日はF公園に行き、フリスビーで思い切り発散させてやった。本人も帰り道ケラケラ笑っていたので、よほど楽しかったのだろう。(あ)は、口では「良かったねぇ、楽しかった?」と言いながら、「なぜ今日に限って、いつもより早く家に帰るのか」とルーシーに疑問を持たれないように、気をつけていた。相手は妖怪サトリである。これからシャンプーをすることを気取られては、道の真ん中でストライキを起こされてしまう。
 無事に帰宅し、あらかじめブラシをかける。恐るべき量の毛が抜け、ブラシは直ぐに使用不可になった。シャンプーでは、いつも以上に地肌を刺激して、抜け毛を落とそうと努める。お湯で泡を流すと、排水溝のネットは黒白混じってグレーの毛で一杯。ルーシーが体を震わせると、抜け毛がタイルの壁につき、こちらの顔まで飛んでくる。タオルで乾かそうとすると、タオルまでグレーになり、水気を取っているのか、抜け毛を体になすりつけているのか分からないほどだ。
 シャンプーでフラストレーションが蓄積したのか、ルーシーは洗面所をグルグルと走り回り、床に敷いていた新聞をビリビリに破いた。無理矢理押さえつけて、ドライヤーで乾かす。ドライヤーをかけ始めて、直ぐに熱気の勢いが落ちたので見ると、吸気口のメッシュに毛がへばりついて完全に塞いでいた。洗面所の壁も収納の扉も毛で覆われた。生乾きになったところで、ドライヤーはストップ。ルーシーをビビらせ過ぎても、ますますシャンプー嫌いになるだけだ。とりあえず、サークルの中に入れて落ち着かせ、その間に浴室と洗面所の毛を掃除しよう。後でゆっくり乾かせば良いだろう。
 サークルに入れた途端、ルーシーは安心して気が緩んだのか、いきなり小をやらかした。しょうがないので、抱き上げて浴室に逆戻り。幸い体は小水がかかっていなかった。首根っこを捕まえて足だけ洗う。洗面所に出すと、「またイヤなことをされた〜」とばかりに新聞にあたり始めた。とりあえずルーシーを洗面所に閉じこめて、その間にサークルの掃除をする。
 その後、洗面所のドアを開けた(あ)は目を疑った。ルーシーの白い足が黒い。新聞のインクが付着したらしい。嫌がるルーシーを再び押さえつけ、タオルで足をこする。「イヤだったら、イヤだ〜!!」とばかりにタオルに噛みつくルーシー。
 夕方の散歩に出る前から、ある程度の覚悟はしていたが、さすがに(あ)もゲンナリである。自分だって、もう浴室には戻りたくない。「イギリス英語でいう"It's a nightmare."というヤツだなぁ」などと考えて、思わず笑ってしまった。
 夕食後、リビングに入れたところ、ルーシーは、明らかに(あ)に対して疑念を持つようになっていた。(あ)の手が簡単には届かない、微妙な距離を確保して、部屋の隅でガリレオ・ボーンを囓る。(あ)の動きを上目遣いでチェックしている。近づこうとすると、ガリレオ・ボーンをくわえて移動する。「ルーシー、今日は、もうシャンプーしないから」「もう大丈夫だから」と言い聞かせ、なんとか体を触らせてもらった。
 ところがだ。手を背筋に沿って動かすと、ごっそり毛が抜けた。(あ)は、ガムテープを輪にして、絨毯に付着した抜け毛をとる。すると、またもや警戒心がムクムクと頭をもたげてきたらしく、ルーシーはガリレオ・ボーンを持って動き回る。移動するたびに抜け毛が落ちる。
 一体、どないせいっちゅーねん!!