あめだす

 雨だす。朝から雨だす。それでも散歩の時間が近くなると、昼寝からゴソゴソと起き出してくるんだす。こちらが息を潜めていると「ワン!」という声が聞こえてきます。それでも無視していると、何やらガリガリという恐ろしい音がします。
 雨だす。一日中、雨だす。散歩を催促するクセに、こちらがレインコートを取り出すと、急におとなしくなって、隅の方に隠れて「居ないフリ」をします。押さえつけてレインコートを着せると、固まって銅像になって居ないフリを続けるか、グルグル歩き回って首輪にリードを装着させまいとします。抱き上げて玄関から出そうとすると、ヤツはその場で足を踏ん張って出ようとしません。
 雨だす。すんごい雨なんだす。ヤツは体が濡れるのがイヤです。追いかけっこでは沼に入るクセに、アスファルトの水たまりは、わざわざ遠回りして避けて歩きます。歩いている途中で急に方向転換するもんだから、こちらはヤツの足を踏みそうになります。(た)の長靴を借りているから、非常に歩きずらいです。たまに避けきれない時は、こちらが謝っているのに、ヤツは「イタイ、イタイ!お母さんに踏まれた!足が折れた!」と大げさに訴えます。
 雨だす。帽子もずぶぬれの雨なんだす。こっちだって濡れるのは勘弁して欲しいです。ヤツがリードをぐいぐい引っ張るから、こっちは傘もさせないのです。ウ○チだって、ティッシュが濡れてしまうから、取るのが大変です。リンゴ+オカラのウ○チなんか、取ろうとしたら、ボロボロと形が崩れてしまいます。
 雨だす。横殴りの雨だす。一日中、雨模様だと運動不足のせいか、ウ○チもスルスルとは出ません。歩いている間中「ルーシー、もうウンウンないの?」と訊き続けなければならないのです。雨の時は、他のワンちゃんや飼い主さんに会うチャンスが減るので、ヤツは特にキョロキョロして、小さな物音が聞こえると、雨の中で立ち止まり動こうとしません。「ルーシー、誰もいないよ。行こう」とうながしても、「イヤ、今、音が聞こえた。絶対いる」と、しばらく踏ん張っています。その間、こちらは濡れながら待っていないといけません。
 雨だす。休みなく降り続く雨なんだす。家に着いたら、わざわざこちらに向かって体を震わせるので、水しぶきがかかります。「お母さんのせいで、私が濡れたやんか〜!」と(あ)の足に濡れた顔や頭をすりつけてきます。足を拭こうと抱き上げると、例の調子で唸られます。
 雨だす。どうしようもない雨なんだす。こんな時は家で我慢してくれないものか?こちらは毎回そう思うんだけど、結局ずぶ濡れになってます。