幸せの黄色いボール

 以前のようにヘバヘバになるまでは、運動していないルーシー。本人が「まだまだ遊ぶぞー」とアピールしても(あ)は、むりやり連れて帰ることも多い。「ストレスがたまっているのでは?」と思い、夕食後に家の中で少しだけボール遊びをしてやることにした。
 以前は、促されるままにクレートに入り、その途端、沈没したようにグースカ寝ていたのだが、このところ、クレートに入ることを嫌がるようになった。入り口のドアのところで踏ん張って、中に入ろうとしないこともしばしば。大人になって睡眠時間は短くても良いのかもしれないけれど、運動が足りていないせいかもしれない。
 もとより、ルーシーはボール遊びについては、それほど興味がない。こちらがボールを投げても、本人にやる気がなければ、知らん顔をしているだろう。そういう意味で、ボール遊びは、散歩で運動が足りているかどうかを確かめる指標である。、
 ルーシーは、相変わらず、ボールを追いかけるものの、素直に持ってくることはない。それでも本人は狭いL字型の廊下を走ってみせる。やはり満足できていないのか?ルーシーは黄色いボールを口にくわえ、ピーピー鳴らしながら、(あ)に見せびらかす。そして前を通り過ぎる。なんだよー、持ってこないなら、投げられないじゃんか。
 昨夜もボールで遊んでいると、ルーシーは廊下からリビングを覗いて、急に立ち止まった。リビングのドアにはガラスが入っているので、そこからリビングの中を覗くことができる。自分が追いかけていたボールは玄関の方に転がっているのに、もう一つ同じボールがリビングの床に転がっているのが見えたらしい。「あれ?どうして、ボールがあそこにあるの?」
 ルーシーは、(あ)が投げたボールが玄関に転がっているのを見に行った。そして、もう一度、リビングのドアまで走っていき、もう一つボールがあるのを確かめた。どうやらルーシーの頭の中では、黄色いボールはひとつしかないと思っていたらしい。2つ同じボールがあるのを確認して、(あ)の顔を見上げ、なぜかニカッと笑って見せた。
 実は、この黄色いボールは、前に安売りで10個入りのを購入したのだ。今度10個いっぺんに投げてやろうか?2つで混乱するような幼稚なヤツだ。10個なら大混乱して、ガウガウ言いながら、尻尾を追いかけまくるに違いない。