ハゲ

 ルーシーの前足にハゲができた。1センチ以下の小さいものだが、白い毛が抜けて地肌が露わになり、赤くなっている。先日、動物病院に行った時、股関節のことや血液検査で頭がいっぱいで、これについて獣医さんに尋ねるのを、すっかり忘れていた。
 以前より、ルーシーには手足を舐めるクセがあった。特に、帰宅後に足を洗ったり拭いたりした後は、触られた部分が気になるようだった。(あ)は、汚れを落とした足を乾拭きをして、水分をとり雑菌が繁殖しないように心がけていた。しかし、体を離された途端、ルーシーは足をペロペロと舐めていた。
 始めは、後ろ足の内側だけだったように思う。そのうち前足をしきりに舐め、時にカジカジと前歯で毛を囓るような仕草を見せるようになった。後ろ足は少しピンクになってはいたが、毛が抜けるほどではない。「さては前足をダニにでも食われたか」と思い、ハゲの部分を間近に観察してみるが、特にそんな様子はない。
 皮膚炎の可能性も考えて、動物病院に行き確認してもらう。今のところバイ菌による感染や皮膚炎の兆候は見られないという。しかし、それならどうして?
 可能性としては2つ。一つはアレルギーの初期症状。しかし、そうであれば排泄にも問題が出ることが多いし、もっと他の部分にも症状が見られるはずだという。
 もう一つは、「退屈しのぎ」。昼寝にも飽きて、やることがないから足を舐めてみた。特に、特定の場所が痒かったり、違和感を感じたりという訳ではない。しかし同じところを舐めることで、そこの部分の毛が抜けて、皮膚が露わになった。露わになった皮膚は乾燥しがちで、表皮が突っ張るようになり、違和感や痒みを感じるようになる。さらに舐め続けたおかげで、赤くなってきたという訳である。今週は特に雨が多く、散歩も短めだったせいもあり、ヒマをもてあましてハゲの部分を舐めたおしたようだ。
 これは、ある意味で、最初の問題よりも厄介である。なぜなら原因は「退屈」だからだ。股関節に支障をきたさないようにと、前回、獣医さんからいただいたアドバイスに従い、ルーシーには取っ組み合いや追いかけっこを制限している。その代わり、歩く時間を1時間から1時間半近くに延ばしたところだ。おかげで(あ)は始終筋肉痛で、サロンパスが手放せず、(た)の近くを通り過ぎただけで「アンタ、サロンパスくさいで」と文句を言われている。これ以上、どうせいっちゅーねん!もう限界です!!
 獣医さんには、とりあえず、痒みを抑える内服薬を一週間分だけ処方してもらった。それでルーシーが「今そこにあるハゲ」を気にしなくなったら、自然と毛が生えてくるだろうという。足の汚れを落とす場合は、洗うのではなく拭くようにする。また、拭くのは極力肉球だけにする。昔の役場の事務員さんのように腕カバーでも装着させて、散歩中にエルヴィスが汚れないようにするか?ただし、根本原因は本人の退屈しのぎにあるので、ここは動物病院で対処できる訳ではない。
 退屈って言われてもなぁ。アンタには一日3時間はつきあってるんだよ。これ以上は無理だよ。なんとか自分で暇つぶしの方法を考えてくれないかしら?
 病院からの帰り道、川沿いの桜並木に立ち寄り散歩する。今日の(あ)は、空同様ドンヨリ曇った気分である。