ルーシーが、クーちゃんと久々に激しいバトルをやらかした。日中(あ)が留守をしたために、ルーシーはストレスが貯まっていた。そのせいもあるだろうが、いつもは仲の良い二匹が、突然歯を剥き、ガウガウ言いながら噛み合いを始めた。
 (あ)は「ルーシー!ノー!」と注意するが、二匹は興奮状態にあり、とても割って入れる状態ではない。そこで、水の入ったペットボトルを二匹の近くを狙って投げ、もう一度「ルーシー!ノー!」と注意した。
 二匹は、ペットボトルが地面に当たる音に驚き、ようやく離れた。何が原因なのかは分からない。おそらく、どちらかが、相手にチョッカイを出し、気に入らなかった方が怒り出し、それがエスカレートしたのだろう。
 こういう「バトル」は今回が最初ではない。以前同じように噛み合いをしたことがあったが、翌日にはケロリとして追いかけっこをしていた。ただし、今回は、ちょっと違う。バトル終結後、クーちゃんが、明らかにルーシーを避けている。
 一方、ルーシーは「あぁ、忙しい、忙しい」と他のワンちゃんの飼い主さんのところへ行き、おやつをねだっている。「ルーシー、走っておいで」と声をかけても、こっちを見るものの、他のワンちゃんとも遊ぶ様子がない。
 クーちゃんはと言えば、なぜか(あ)の側にやって来て、離れようとしない。お腹が空いて、おやつが欲しかったのかもしれないけれど、いつになくつきまとってくる。もしかして、ルーシーに負けたと思って、ルーシーよりも強い(はずの)人のところに保護を求めに来たの?
 「クーちゃん、ルーシーが乱暴者でごめんね」と謝っていると、クーちゃんのお母さんが笑われた。「クーは、これまで好き放題してきたから、自分より強いワンちゃんがいてくれた方が良いねん。」
 喧嘩の後、当事犬は互いに無視することが多い。目を合わさず、知らん顔を決め込む。クーちゃんもルーシーも、無視しているつもりなのだが、ルーシーはなぜか食い気に「走って」しまった。
 しばらくすると、クーちゃんがルーシーの後ろに近づき始めた。頭を下げ、耳を後ろに倒し、オズオズと近づく。すると、ルーシーは走り出し、少し離れた場所で「遊ぼう」のポーズをした。再び追いかけっこが始まった。時間を置いたことで、頭を冷やして、いつもの仲良しさんに戻ったようだ。
 雨の勢いが弱くなり、二重の虹が出た。(あ)は小学生の頃の自分を思い出して、なんだか笑ってしまった。