性格の変化としつけ

 小雨が降る中、朝の散歩に出たところ、2匹のウェスティを連れた方に出会った。普段あまり会う機会のないワンちゃんだが、決して初めてではない。こちらが坂の上から下りていくと、2匹はルーシーの姿を認め、立ち止まって待っている。一方、ルーシーはなぜか尻込みをして、どうしても坂を下ろうとしない。
 (あ)が「ルーシー、大丈夫だから」と言いきかせても、どんどん後ろに下がって、ものすごい力でリードを引っ張り、それ以上後ろに行けないとなると、横道に逃げようとする。「ランディと同じワンちゃんだよ」と、幼なじみのワンちゃんの名前を出しても、聞く耳を持たない様子。しかたがないので、あちらの飼い主さんに謝った上で、こちらは横道に入った。しかし迂回したつもりが、ジョギング・コースに出てきたところで、また2匹に出会ってしまった。
 またまた逃げ出そうとするルーシー。ウェスティの飼い主さんは、追いかけようとする2匹を押さえて、私たちを先に行かせてくれた。
 不思議にも、(あ)には、この二匹とルーシーがトラブルを起こした記憶がない。あちらは尻尾を振って、お座りして待ってくれていたのに。それに、たとえ相手に吠えられたり、威嚇されたりしても、今までのルーシーなら、じっと相手を見ているか、(あ)の顔を見て「あの子、なんだか怒っているみたい」と笑っていた。こんなに怖がるほどイヤな思いをしたことはないはずなんだけど。
 夕方、帰宅する途中で、タービュレンを連れた飼い主さんに出会った。このワンちゃんは、ルーシーと同じペットショップの出身だ。飼い主さんは訓練士をされている。立ち話の途中でランディくんがやって来た。それで今朝のことを思い出して、そのことを話してみた。
 「おそらく貴女が気づかないだけで、彼女(ルーシー)はイヤな思いをしたんでしょう」と訓練士さん。犬には40以上ものボディ・ラングエッジがあるそうだ。しかし、その大半を飼い主は理解していない。犬には社会化が必要ということで、知らないワンちゃんとの出会いを奨励しているし、実行する飼い主さんも多い。犬が「イヤだ」とシグナルを出しているのに、飼い主が気づかず、無理に会わせようとすると、逆効果になるという。
 「でも、ルーシーには逆ギレ傾向があるので、以前から本人が嫌がるのに他のワンちゃんと無理に遊ばせてはいないし、近頃急にそういう態度に出るようになったんですけど。」と言うと、「ルーシーは元来シャイな性格みたいだし」と仰る。それに、犬は1才、3才を境に性格が変化するケースが多いそうだ。
 さらに、公園で犬を自由に走り回らせていると、しつけが入りにくくなるという。訓練士さんは、ご自身の犬を家では自由に走り回らせているけれど、散歩の時は決して自由にしないそうだ。
 うーん、これは難しいなぁ。本人が一番好きで、疲労度もストレスの解消度も高い運動だもの。それに、しつけの効果は公の場で活かせないと意味がない。他のワンちゃんや飼い主さんなどの誘惑の中でも、(あ)の指示に従ってこそ、しつけができていると言えるのではないか?現に、呼び戻しは少しずつ成功率が上がってきている。
 訓練士さんのタービュレンは、ペットショップから引き取ってから、まだ2週間しか経っておらず、しつけは1週間目だそうだ。それなのにアイコンタクトはバッチリだし、引っ張りも注意されたら、すぐに止める。なんて、お利口さんなの!!
 実証例を目の前にすると、「ルーシーを他のワンちゃんと遊ばせるのは止めた方が良いのかなぁ?」とも思う。訓練士さんのアドバイスを考えながら歩いていると、思わず「どうしようかなぁ」という言葉が口から出た。そばでルーシーが(あ)を見上げ、「お母さん、今日も楽しかったねぇ」と笑っている。
 うーん、本当にどうしたら良いのかなぁ?