ルーシーの新技

 梅雨が間近という今日この頃、お日様が照る日は貴重だからと、つい散歩の時間が長くなる。ただし確実に日光は強くなっているらしく、長毛で黒い部分が多いルーシーは、すでに暑いようだ。少しでも涼しく、そして汚れないようにと、ルーシーには散歩の時に白いTシャツを着せている。本人は全く嬉しくないようだけど。
 他のワンちゃんと公園で走り回ると、最近は、すぐお腹が熱くなるらしく地面に腹這いになる。水を飲む量も断然増えた。水を入れたボウルを前足で挟むように座り、ジャブジャブ飲んでいる。周囲には他のワンちゃんもボール遊びをしているし、追いかけっこのメンバーは自分の上に乗って「遊ぼう」と誘ってくる。落ち着かないのか、ルーシーはついボウルのことを忘れて立ち上がろうとした。途端にボウルがひっくり返り、水が地面にこぼれた。ま、ここまではよくあることだ。
 次の瞬間、ルーシーはお腹を地面につけた。偶然ではない。確信犯の犯行だ。おんどりゃあ、なんちゅーことさらすんじゃい!!
 遊び始めて3分と経たないうちに、Tシャツはすでに汚れていたのだが、水を吸った上に地面の泥までついて、見るも無惨な状態である。他のワンちゃんの飼い主さん達も「あ〜あ」「明日雨なのに〜」と同情して下さった。クーちゃんのお兄ちゃんも「ルーシー、ドロドロになってんなぁ。どうすんの?」と訊いてくれる。「どうするも、こうするも、洗わなしゃーないよなぁ」と言うと、思案するかのように腕組みして「うん」とうなづいた。
 散歩の帰り道、自分が悪いことをしたことを自覚しているのか、いつになくルーシーは(あ)に従順だった。汚れたTシャツを脱がすのも、いつもは柱と柵の間に隠れて嫌がるのに、今日は妙に素直だ。とりあえず、(あ)は足を洗うまで、不機嫌を装うことにした。
 驚いたことに風呂場でも歯を剥くことなく、おとなしく(あ)の指示に従って体の向きを変える。やればできるじゃん!「良い子だねぇ、エライねぇ」と盛大に褒める。
 ところが、タオルで足を拭く段になって、ルーシーは歯を剥き、唸り始めた。(あ)が「ルーシー、唸らないよ」と言ってもダメ。良い子でいられる時間は、ウルトラマン並みに短いのねぇ。そこで(あ)は手をルーシーの口元に差し出して「ルーシー、良いよ、噛みなさい」と言った。すると、ルーシーは耳は伏せて鼻面に皺を寄せ歯茎を見せながら、(あ)の手をペロペロ舐めた。(あ)の手を噛んだらいけないことは分かっているけれど、「イヤな物はイヤだ〜!」ということらしい。
 歯を剥きながら舐めるなんて、なんちゅー器用な!そいでもって、なんちゅーしつこいヤツだ!いい加減あきらめて、無駄なエネルギーを使わずに、おとなしく洗われてちょうだいよ!