グレてやる!

 今朝のルーシーは、なぜか元気がない。(あ)がクレートのドアを開けて、「ルーシー、おはよう」と声をかけても、奥の方に寝たまま動こうとしない。いつもなら(あ)がリビングに入った瞬間に、クレートをガタガタいわせるのに。「どうしたん?」と声をかけても、こちらの目を見ようとしない。ようやくクレートを出てきても、リビングの窓の側に寝転がって、大げさなタメイキをつく。
 「ルーシー、おいで。シーシーしなさい」と、(あ)が先導してルーシーを廊下に誘う。本人は、リビングから、なかなか出て来ようとしない。(あ)はしばらく廊下で待ち、若干低い声で「ルーシー!」と呼ぶと、しぶしぶといった表情でルーシーが現れた。階段の一番下に座っている(あ)に向かって、ノロノロと歩いてくる。「ハイハイ、次は体を撫でるんでしょ?」と、頭を差し出す。いつもなら「首揉んで。あ〜、そこそこ。気持ち良い〜」「もっと揉んで」と催促までするのに、今日はすぐに廊下にゴロンと横になる。こちらが、お腹を撫でてやろうとすると、前足で「要らない」と手を払う。なんだか投げやりな感じ。
 昨日は雨のせいで、いつもより運動量は少なかったので、体が疲れているとは思えない。下痢や嘔吐、病気の気配もない。だとすると、なんだ、こりゃ?
 このところ(た)は忙しくて、ルーシーが起きている間に帰宅していない。ルーシーは、(た)が帰宅して夕食を食べているのを聞きつけ、クレートの中から吠えて「外に出して。一緒に遊ぼう」と要求する。それでも遊んでもらえないと分かると、次の朝に(た)に甘えようと我慢して寝るようだ。ところが、今朝の(た)は、いつもより早い時間に家を出た。ルーシーはクレートの中で起きていたが、(た)が家を出て行く物音を聞いて、アテが外れたのを知り、ふてくされてしまったようだ。
 「お父さんに相手にされなかったからって、お母さんにあたったって、しょうがないでしょーに。お母さんが、代わりをできる訳じゃないもん。」
 (あ)がそう言い聞かせても、ルーシーは鼻からタメイキをつくばかりだ。お父さんじゃなきゃダメらしい。
 朝の散歩でも、普段は人間なら誰にでも挨拶に行くルーシーだが、今日は、途中ですれ違う男の人に敏感に反応していた。ひとりひとりに「可愛がって〜」とアピールするが、大体相手は気づかないで去ってしまう。ルーシーは、その度に落胆して尻尾を下げる。(あ)が「みんな忙しいんだよ」と言いきかせると、横目でうらめしそうに、こっちを見る。
 だから、お母さんのせいじゃないってば!