紐付きコングとワンコたち

 良きにしろ悪きにしろ、ルーシーには、食べ物以外は「自分のもの」という意識がないようだ。公園で遊ぶワンちゃん達が、自分のオモチャをとってしまっても、笑っていることが多い。(あ)が他のワンちゃんと仲良くしていても、嫉妬することもない。他のワンちゃんのオモチャやボールを横取りしても、それはオモチャやボール自体に興味があるからではなく、あくまで相手のワンちゃんに見せびらかして、追いかけっこに持ち込もうとしているだけだ。
 ルーシーが気に入っているオモチャの中に、紐付きコングがある。黄色い細いプラスチック繊維を縄状に編んで、コングの中に通してある。ルーシーは(あ)とひっぱりっこをしたり、投げたコングを追いかけたりして遊ぶのが好きだ。昨日の夕方、あずまやに行くと、多数のワンちゃんが集まっていた。ルーシーに紐付きコングを投げてやると、クーちゃんも興味を持って走り始めた。二匹はオモチャを引っ張り合い、時に一匹がコングを奪い取り、得意げな表情でウィニング・ランをしてみせる。とられた方は、勝者のワンちゃんがオモチャにあきるのを、虎視眈々とねらい、スキを狙って飛びかかっていく。そして二匹で引っ張り合いを再開する。
 二匹が楽しそうに遊んでいる姿に、周囲のワンちゃんも興味をそそられたのだろう。小太郎くん、クッキーくん、マロくんなどが参加し、全員が団子になって走り始めた。よく見ると、小太郎くんの口の中にはお気に入りのボール、クッキーくんはなぜか小太郎くんのお尻に向かって吠えている。アンタたちは、一体何に興味がある訳?よく分からないけど、みんな楽しく仲良く遊んでいた。
 今朝、同じオモチャを持って公園へ。ルーシーに投げて遊んでいるところへ、アンディくんとお母さんが登場。アンディくんは、地面に落ちていたコングのオモチャに、さっそく興味を示す。アンディ君のお母さんがオモチャを指して「アンディ、持ってきて」と言うと、オモチャのあるところまで嬉しそうに行く。しかしオモチャをクンクン嗅いでいるが、一向に拾い上げようとしない。
 あ、そうだ。そういやオモチャ洗ってなかったわ。オモチャのニオイを嗅ぐアンディくんの表情は、みるみるブルーになっていく。「ゲッ、何これ?バッチイ〜!触りたくない〜!でも、お母さんの命令だもん。どーしよう?」
 察するに、アンディくんの中では、すさまじい葛藤があったに違いない。悩んだ挙げ句、ヒモの端っこを、そっとくわえて持ってきてくれた。運んでいる間、おそらく息を止めていただろう。・・・可哀想なアンディ。ごめんね。
 アンディが命令に従ってオモチャを取りに行っている間、ルーシーは側で呵々大笑していた。「ね、良いでしょ、それ?」とでも言いたげだ。散歩の度に使っているから、ルーシーはコングに泥が付こうが、他のワンちゃんがくわえようが、一向に気にしない。そうしているうちに麻縄なみの神経になってしまったようだ。
 アンディ、次に会えるまでに、ちゃんとオモチャ洗っておくから。本当にゴメンネ。