飛びつきOK?

 土曜日のシツケ教室で、N先生は部屋に入るや、ルーシーの方へ近づいた。ルーシーは、お座りはしているものの、尻尾を打ち振り鼻をクンクン鳴らし焦れていた。先生は静かな声で「良い子だねぇ、待て、待てよ」と声をかけながら、少しずつルーシーに近づく。そして目の前に立った時、高い声で「大好き〜!」と声をかけた。すると、ルーシーはビヨンと飛び上がり、先生の腕の中へ。
 「このコマンドを覚えさせておくと、便利ですよ」と先生。飛びついて良い時と悪い時を区別することができるから、犬は「コマンドを出されていない時は、飛びついてはいけない時だ」と理解できるからだそうだ。
 最初のトライであまりにも見事に技が決まって、飼い主二人は驚いてしまった。普段の生活では、飼い主がルーシーにジャンプさせることはないし(ルーシーが勝手にジャンプすることはあるけれど)、「好き」という言葉は理解できても「大好き」は分からないはずなのだ。それなのに、先生の「大好き〜!」という言葉を合図に、ルーシーはジャンプをした。さすがは先生、犬の専門家である。
 ところが今朝も家でやってみたところ、ルーシーは(あ)に飛びつこうとしない。お座りをして、尻尾を振るばかりなのだ。
 考えてみると、飛びつき癖を矯正したかった(あ)は、今までルーシーに飛びつかないように教えてきた。おかげで今では飛びつかれることは、少なくなった。ところが、ルーシーは「人に飛びついたらいけない」ではなく「(あ)に飛びついたらいけない」と理解してしまったらしい。そして、家の外でも飛びつく相手を選ぶようになってしまった。
 飛びつく相手の条件は以下のとおりである。
 1.身長150〜160センチ以下
 2.性別は女性の方が好ましい
 3.年齢は若い方が好ましい
 4.声は高い方が好ましい
 マロくんのお姉さん、そういう訳でターゲットになっちゃっているんです。ごめんなさい。

 今さら(あ)が「自分に飛びつけ」と教えても、ルーシーは混乱するばかりだろう。このコマンドの勉強は(た)に任せることにするとして、じゃあ、このコマンドをどのように使えば良いのだろう。なぜなら、飼い主が犬に向かって、自分以外の人間に「飛びつけ」と命令を出すような状況なんて考えられないからだ。警察犬を育成しているなら話は別だけど。
 ルーシーの態度から飛びつきたい衝動が見えた段階で、飼い主は自分に飛びつけと指示するのだろうか?そして、そんなコマンドにルーシーは納得して従い、満足できるんだろうか?
 な〜んか納得できないなぁ。そう考えがまとまるまで1日以上もかかっちゃった。ルーシーのジャンプ技が素晴らしく、半分感動してたもんで(親バカ)。