クンクン2

クンクンでW杯を救う
 1966年サッカーW杯イングランド大会の開催4ヶ月前、ジュール・リメ杯が何者かによって盗まれた。場所はウェストミンスターのメソジスト・セントラル・ホールで、ジュール・リメ杯が展示されている最中だった。ジョー・ミアーズ英国サッカー協会会長の自宅には郵便で、杯のフタの部分と15,000ポンドを要求する脅迫状が送られ、数回電話でも要求があったという。特殊部隊が動員されるなど大きな騒動になった。
 この事件の結末は、非常にあっけないものだった。1才になるボーダーコリーのピクルスが自宅の庭で新聞にくるまれたジュール・リメ杯を見つけたのだ。飼い主は杯を警察に届け、大会は無事に行われた。ピクルスは6,000ポンドの報奨金と共に、ドッグ・オブ・ザ・イヤーのメダル、1年分のドッグフードとテレビ出演というご褒美が与えられた。おかげで飼い主は家を新築したという。
 なお、不運だったのはミアーズ会長で、事件中に倒れ、決勝戦を見ることなく心臓発作で亡くなった。ピクルスは、その後、路地でネコを追いかけて自分のリードに絡まり亡くなったそうだ。今は自分が建てた家の敷地で眠っているという。
クンクンで人命救助
 VITAワイヤレス・サマリタン賞が、初めて人間ではなく、ワンちゃんに授与された。受賞者はフロリダ州オーランドに住む体重17ポンドのビーグル、ベルちゃんである。
 同賞は、携帯電話を使って、生命を救い、犯罪を未然に防ぎ、緊急事態の救助を行った功績に対して、与えられる。ベルちゃんの場合、飼い主さんが糖尿病患者で発作を起こし倒れた時に、ベルちゃんが携帯電話を囓って911を押し、助けを求めたことが受賞理由である。ベルちゃんは、このような緊急時に助けを呼ぶ訓練を受けていたのだ。
 飼い主さん(34才)は、フライト・アテンダントだった時、よく飛行機を利用するお客さんから、糖尿病患者のサポートをするワンちゃんの話を聞いた。「サポート」の具体的な内容とは、人間の血糖値の異常を検知し知らせるというものである。
 ベルちゃんは、定期的に飼い主さんの鼻を舐める。何か異常を感じると、前足を使い鼻を鳴らして知らせる。飼い主さんは、ベルちゃんがそのような仕草をすると、急いで血糖値を計測するそうだが、これまでに間違ったことがないそうだ。

クンクンでお母さんをサポート?
 S市に在住する女性は、早朝から途方に暮れていた。彼女が昨夜就寝した後、遅い時間に帰宅した彼女の夫は、飲酒酩酊の上、トイレや洗面所を汚した。妻に激怒されると恐れた夫は、姑息にも証拠隠滅を図っていた。ただし窓を閉めていたことと、証拠隠滅が中途半端な掃除でしかなかったことから、朝から家の中には異臭が漂っていた。女性は、この日が燃えるゴミの収集日であることや、雨が降り出す前に犬に追加の散歩をさせる計画により、通常より早起きをしたことから、事態を知ることとなった。
 中途半端な証拠隠滅をしたために、一見、家の中は綺麗に見えるが、窓を開けても異臭は消えない。かくして、女性は夫が汚したと思われる洗面所、風呂場、トイレを再度、掃除することとなった。この時、彼女の中に一片の殺意が生まれたことは言うまでもない。
 除菌消臭剤、漂白剤、歯ブラシまで動員した徹底的な掃除が終わり、女性が愛犬のルーシー(ボーダーコリー♀一歳二ヶ月)に廊下で朝食を与えようとしたところ、普段なら、エサに目が釘付けのはずのルーシーが、トイレのドアが気になるらしく動こうとしない。とりあえず別の場所で愛犬にエサを与え、女性は、また再びトイレ掃除をすることとなった。
 女性は語る。「普段、ルーシーには経験から学んで欲しいと思っていますが、40過ぎになっても学べていない人間がいるんですから、1才2ヶ月の犬には無理なのかもしれません。」