立腹

 一日一度は怒るのがルーシーの日常。よくもあきらめずに毎日同じ事で怒るなぁと、こちらが感心してしまうしつこさだ。
 今朝の散歩でも、帰宅後、着せていたTシャツを脱がせようとしたら歯を剥き唸る。散歩の前は、Tシャツを着るのがイヤだと逃げ回っていたのに、なぜか脱ぐ段になったら、それもイヤだという。体を伏せて、地面に張り付くような体勢で脱がせまいとする。訳が分からん。
 そんなルーシーの姿を見ていたら「ん?何かに似てるな」と思い始めた。ところが肝心の何に似ているのかが思い出せない。昔よく見たアレ、何だったっけ?なんか大昔に見たような。あ〜、思いつかない!
 遠い記憶をたぐり寄せながら、あーでもない、こーでもないと思いを巡らし、ルーシーの腕を袖から出す。すると、次の瞬間、ルーシーが「アゥゥゥ(イヤなものはイヤなの!!)」と思いっきり(あ)を見上げた。耳は後ろにペッタンコになるまでそらし、鼻の穴を思い切り開き、剥いた歯を見せつけるようにしている。自慢のアーモンド・アイが変形して白目まで剥いている。
 あ、この顔、ヒョウタンツギだ!そうか、ヒョウタンツギだったのか!!
 取っ組み合いのせいで、ルーシーが着るTシャツはボロボロ。時には、本当にツギをあてたものを着せている。ヒョウタンツギそのものではないか!
 (あ)は、怒っているルーシーを前に、ついつい思い出し笑いをした。すると、本人は「な、何なのよ」と柱の陰に隠れてしまった。自分が反抗的な態度をとったら、注意されることは知っているけれど、逆に笑われた。これは相当気味が悪かったらしく、側で何やら笑い転げている(あ)を柱の陰から見つめていた。そしてゴマをするつもりか(あ)に近づき、「お母さん、大丈夫?」と手をペロペロ舐めた。