ルーシーの遊び仲間には、ウィペットのもうすぐ一歳を迎える男の子がいる。会うたびに、満面の笑みで挨拶してくれるフレンドリーなワンコである。全く贅肉がなくスレンダーなボディで足が長く、全身毛むくじゃらで胴長短足のルーシーとは正反対だ。二匹は、お笑いコンビで言うなら、ドランクドラゴンみたいなものか。
 彼は子供の頃からスピードランナーではあったけれど、最近スタミナもついてきた。ルーシーが疲れて伏せの体勢を取り、お腹を地面につけて冷やしていると、彼はルーシーの後頭部を尖った鼻先でツンツンとつつくマネをする。「もっと遊ぼう。走ろうよ」と誘っているようだ。
 そのウィペットちゃんが、膝蓋骨が外れやすいらしいと聞いた。(あ)は飼い主さんに直接確認はしたものの、彼をルーシーと遊ばせることに少々不安を感じている。ルーシーとの遊びは少々荒っぽいし、今はこのワンちゃんも若いから問題がなくても、後になって痛みが出て走れなくなるようなことがあっては、申し訳ないし可哀想だ。
 少し、このことについて調べてみた。
 ウィペットで、股関節形成不全やpatellar luxation(膝蓋骨の脱臼)の症状を呈する率は、他の犬種よりも少ないという。本来、petellar luxationは小型犬種やミニチュア犬種によく見られる症状で、中でもケアン・テリアが一番多いそうだ。走ったり遊んだりするうちに、trochlear groove(直訳すると「滑車の溝」。医学的な知識がないので良く分からないけれど)から膝蓋骨が外れて、足の内側に滑る。これは、trochlear grooveが生まれつき浅かったり、激しい運動を続けているうちに摩耗してしまったりして、膝蓋骨が緩くなってしまうためだ。症状自体はあまり目立ったものはなく、自分で膝蓋骨を正しい位置に押し込んで戻すこともできる。しかし一回外れると、繰り返し外れるようになるらしい。
 症状は、まず後ろ足だけでスキップするような仕草から始まる。足が痙攣した時のように、キャンと鳴くこともある。そして、両方の後ろ足を揃えて、ウサギのようにピョンピョンとホップする。初期症状で痛みが出ることは、まれだそうだが、あまりにも激しい運動を毎日長時間、長期間続けると、膝の関節が伸びきってしまい、戻らなくなってしまうこともあるとか。一番気をつけなければならないのは、ジャンプと急停止だそうだ。やはり膝の関節にかかる負荷が大きいのだろう。 
 こんなことを書いて、我ながら「大きなお世話」だと思う。いたずらに、このワンちゃんの飼い主さんの不安を煽るような気もする。しかし、このワンちゃんが優しくて素晴らしいワンちゃんだからこそ、元気で居て欲しいのだ。また、ルーシーも股関節形成不全の予備軍だ。二匹がいつも楽しく遊び、互いにおじいさん、おばあさんになるまで元気でいて欲しいと思う。