怪しい2

 アンディ君は、ワンちゃんに対しては威嚇することはあっても、人間に対して敵意を見せることはありません。昨日のブログで誤解されてはいけないので、彼の名誉のために一言付け加えておきます。
 ルーシーの住む地区は、ニュータウンの中でも初期に開発されたため、住民の平均年齢は、おそらく他の地区よりも高いだろう。開発当初、子供だった人たちは既に独立し、最近になって自分の子供を連れて里帰りしている。日中、庭にルーシーを出して水まきをしていると、ヨチヨチ歩きの子供を連れた、おじいちゃんやおばあちゃんが通りかかる。おじいちゃんやおばあちゃんはルーシーの姿を認めると、孫の側に膝をついて指さしながら「ほら、ワンワンだよ。大きいね」などと話しかけているようだ。
 残念ながら、この微笑ましい風景は、ルーシーの目には怪しく映る。柵まで行って、相手の動きをジト目で見つめている。オイオイ、初めて見るワンコにメンチをきられたら、子供はワンちゃん全般に良い印象は持ってくれないぞ。笑って、笑って。
 ルーシーは基本的に人が大好きで、大好きなあまり相手に飛びついてしまうので、うかつに幼児や高齢者に近づけられない。うっかり飛びついて相手にケガなどさせては大変だからだ。そういう訳で、これらの人々を避けたり、なるべく近づけないように努めていたら、幼児や高齢者に対して唸ったり吠えたりするようになってしまった。これでは孫の情操教育に貢献できるどころか、邪魔をした上にトラウマの原因になりかねない。
 ルーシーは1才を過ぎた頃から、見知らぬ物や人を警戒し、それを露骨に態度に表すようになった。ルーシーが怪しいと思う人間のタイプは、最初は高齢者や幼児だった。高齢者と言っても、腰が曲がっていたり、動くスピードが異常に緩慢な人たちに限られており、これはルーシーが相手のシルエットや動きで「この人、今まで見たことがないな。怪しい」と判断したことを示している。幼児に関しては、相手が非常に小さくて動きがテケテケしている子に限る。その一方で幼稚園児は(特に運動会での幼稚園児は)大好きなのだ。だから、高齢者や幼児を見かけたら(あ)はルーシーの注意を別のところに引いて、やり過ごすように努めていた。No.2を拾っている時、地面ばかり見ているため、不意をつかれることはあるけれど。
 ところが、ルーシーが怪しいと思う人間のタイプは分化し、予想がつかなくなってきた。たとえば、異様にでかい帽子をかぶりウォーキングをする中年女性、異様に化粧の濃いウォーキングおばさん、博物館のガラス製の壁面に向かって太極拳や自己流の体操をするおじさん、ストリートダンスに興じる小学生グループ(ちょっとテケテケしてる?)、自分たち以外の人にも話を聞かせたいのか、大きな身振りと声でしゃべりながらウォーキングをするおばさん仲間、一様にウェストポーチをつけた高齢者によるウォーキング愛好会などなど。
 さらに、ルーシーは自宅でも、怪しいと思った人に唸るようになってしまった。新聞集金のおばさんや、○阪ガスの機器点検の担当者である。点検担当者は30代くらいの優しげな男性で、普段の散歩で出会ったとしたらルーシーが自分から甘えそうなタイプだ。唸る原因は、彼が点検用の機材の入った大きな袋を肩にかけていたこと、台所と家の裏、風呂場を動き回っていたことくらいしか思いつかない。去年、大工さんが来た時は、熱烈歓迎だったのになぁ。一方、宅急便や郵便の配達担当者は今でも大好きだ。変なの。
 飛びつき癖が落ち着いたら、ルーシーには高齢者や幼児にも積極的に会わせて、慣れさせたいと思っている。しかし、分化してしまったタイプについては、どうしたら良いかしら?