ピー太とルー吉

むかしむかし、ピー太とルー吉という二匹のワンコがおったそうな。ピー太は足が長く、駆けっこと球拾い、円盤追いが得意の働き者。一方のルー吉は短足で鈍くさく、何をやっても中途半端なグータラ者。ピー太とルー吉には、全く似たところがないのじゃが、なぜか二匹は仲の良い友達じゃった。
ルー吉がいつものようにグータラな円盤追いをしていたら、ピー太がやって来た。ルー吉は、ピー太が無類の円盤好きなのを知っていて、自分はさして円盤追いが得意ではないのに、口にくわえた円盤を見せびらかしながら走ってみせた。ピー太は、ルー吉の円盤を見た途端「欲しい!」と思った。「ルー吉、ちょっとその円盤を見せて」と、ルー吉の後ろに付いて走る。ところが、ひねくれ者のルー吉は「しめしめ、ピー太め。ワシが円盤を持っていたら、追いかけてくるわい」と、さらに得意げに円盤を見せびらかし、ピー太を無視するようなフリをして走り続ける。


 心優しいピー太は、自分がルー吉よりもずっとずっと強くて速くて、円盤追いも得意なのを知っていたが、ルー吉から力づくで円盤を取ろうとはしなかった。それでも円盤は欲しい。ピー太はだんだん我慢ができなくなってきた。
その様子を見ていたピー太の母さんが、ピー太の円盤を取り出した。円盤をもらったピー太は「ワシにも円盤あるもんね〜」と、ルー吉に見せびらかした。一方のルー吉は、ピーターに遊んでもらいたいだけで、ピー太の円盤には興味がない。「ふぅん」と、地面のニオイを嗅ぎ、何やら拾い食いをする。「ルー吉、ほら、ほら。円盤じゃ」と、ピー太は口の中で円盤を噛んでカチャカチャ音を出し、ルー吉の注意を引こうとするが、相手の反応がない。ルー吉は、気のない素振りをしながら、ピー太が円盤を落とすのを待っていた。今度はピー太の円盤をくわえて走ってやろう。そうすれば、自分を追いかけてもらえる。
 ピー太が落とした隙を見て、ルー吉が円盤を奪い取り、走り始めた。ところが自分の円盤を取られたピー太は、ルー吉の円盤を取ってしまった。二匹とも、相手の持っている円盤を自分が奪い取ったら、追いかけてもらえると思っておったのじゃ。かくして、いつまでたっても円盤をくわえ、相手が落とす隙をねらっているだけで、なかなか楽しい追いかけっこはできなんだそうだ。
 「ルー吉、早く追いかけろよ。暗くなっちゃったじゃないか!」
【今日の教訓】円盤はかみ続けると、花瓶敷きになる。