股関節形成不全でも運動は必要。フリスビーもアジリティも見込みがなさそうなルーシーに「ドッグ・ダンスは?」と勧めて下さる飼い主さんは多い。誘われるままに一度、単発の行事に参加して(あ)は「これは、犬だけでなく飼い主も大変だ」と痛感した。
 まず、ダンスには様々な技がある。「歩く」だけでも「ウィーブ」「バック」などから、二足歩行やもっと複雑なステップ、車の三点ターンみたいな「ターンバック」「欽ちゃん走り」みたいなのもある。一つ一つの技を完成させるのには、やはり時間がかかるだろう。
 ハミルちゃん、リズちゃんにブレーズがそっくり
 ハミルちゃんの二足歩行
 ハミルちゃんのターン
 演技中の青空ちゃん、なんでこっち見てるの?余裕だなぁ。
 個々の技を習得したらシークエンス(連続技)につなげて、なおかつ音楽に合わせる。犬には長い時間、飼い主の指示に集中することが求められ、飼い主は的確に指示を出し、やる気や集中力が下がってきた犬を励まし、自分も踊らなければならない。イライラせずに一つ一つをコツコツと仕上げていく。そんな忍耐力や余裕は自分にあるだろうか?まーーーったくない!ルーシーにやる気があるかどうかはさておき、まず(あ)がダンスをやる資質がない。
 この日は、ロ○ヤルホームセンターの新店舗のオープンで、お友達ボーダーの青空(そら)ちゃんがダンスを披露してくれるというので、ルーシーを連れて出かけた。青空ちゃんはルーシーより1ヶ月ほど年下なのだが、随分と大人で賢いワンちゃんだ。飼い主さんはトレーナーさんで、青空ちゃんはトレーナーさんが講師を務めるシツケ教室でも活躍している。ダンスだけではなく、セラピードッグの訓練も受けていると聞き、(あ)はしみじみ「ボーダーコリーって凄い」と思った。(実際ウチにも一匹黒白の犬はいるけれど、コイツはタヌキに見えることがある。冗談でそう言っていたら、自分でもだんだん「ルーシーはボーダーコリーじゃなくて、タヌキだ」と思うようになってきた。自己暗示というやつだろうか?)
 売り場の一角に緑のカーペットが敷かれ、ダンス・フロアになっていた。通りがかりのショッパーも見られるように作られたのだろうけど、フロアと観客席の区切りはなく、犬と観客の距離は1メートルもなかったのではないだろうか?こんな状況で、犬は飼い主に集中できるのか?カーペットの直ぐ横に座って見ている人もいるし、目の前には幼児たちも嬌声を挙げ小さな手を叩いている。ところがどっこい、青空ちゃんをはじめダンサーたちは周囲に全く惑わされることなく、華麗な踊りを見せてくれた。
 
 いろいろな技を教えて「家ではできるんですけど」という飼い主さんは多い。しかし、状況を問わず教えたことができるかというと、これは非常に難しいと思う。青空ちゃんは、演技中にカートの上に乗ったルーシーを見つけて、ターンしながら、また飼い主さんの足の上をジャンプしながら、こちらに視線を送ってきた(結構お茶目なのだ)。ダンスの動きについては、何十回、何百回と練習を積んでいるから、眠っていても踊れる状態なのだろう。だから周囲を見回す余裕があるのだろうけど、これがルーシーなら自分が演技中だということをすっかり忘れて「遊ぼう!」と行ってしまうだろうな。
 そうなのだ。ドッグ・ダンスの根本は集中力と根気。これらは、運動能力よりも重要に違いない。ドッグ・ダンスをするには、服従訓練ができていないとダメという理由がここにある。
 青空ちゃん、ハミルちゃん、マイルくんのボーダーコリーとラブでレスキュードッグのボルドくん。皆、それぞれにトレーナーさんたちの指示に集中して、素晴らしい演技を披露してくれた。特に、マイルくんとボルドくんが一人のトレーナーさんの指示に従い、踊る姿は圧巻だった。二匹の動きは全く違うもので、時にボルド君の体の上をマイルくんが飛び越し、お腹の下をくぐり、演技中は二匹ともほとんど静止していなかった。
 フリスビーもアジリティもドッグ・ダンスも見込みがない・・・とすると、後は犬ぞりレースかな、ルーシー。
 最後はなぜかピー太(悪いけど、走っている方が格好良いね)