耳の痛い話

 随分前になるが(あ)は指にケガを負い職場近くの整形外科に行ったことがある。その際、負傷箇所は指だったのに、お医者さんに帰り際「痩せて下さいネ」と言われショックを受けた。職場に戻って同僚にそのことを愚痴ったら「あの先生、大半の患者さんに『痩せろ』って言っているらしいよ」と言う。現代人が抱える骨の疾患の大半は、肥満と筋力不足が原因らしいから、「将来患者が困らないように」という、的を射た親切心からのアドバイスだったのだろう。
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、アメリカで犬の肥満治療薬が認可されたという。ファイザーのスレントロールという製品だ。アメリカでは、標準体重を超えた犬が全体の20〜30%を占め、また標準体重を20%以上超えた犬は全体の約5%に及んでいて、400万匹の犬が肥満治療を必要としているらしい。肥満は、アメリカの犬が直面する大きな健康問題になっているそうだ。
 特に都会の犬は、飼い主が留守の間、寝てばかりいて運動をさせてもらえない。飼い主が在宅の場合でも、テレビを見ながら不必要なおやつや人間の食べ物を与えてしまう。「犬たちの間に肥満が蔓延しているのは、人間に肥満が蔓延しているから。人間は太った犬を責めるけれど、すべては飼い主が犬を甘やかしすぎているからだ」
 いわゆる人間用の減肥薬は、血中の脂肪を減らすものだそうで、肝臓に問題をきたす可能性が高いことから、市場には出回っていない。スレントロールも同様に肝臓に問題を起こす可能性があるとの外部からの指摘はあるが、一方、製造元のファイザーは「550匹を対象に臨床試験を行ったが、肝臓への副作用は見られなかった。副作用があったのは嘔吐だ。」と言っているらしい。嘔吐のおかげかどうかは知らないが、スレントロールを服用して1ヶ月に3%の減量が可能なのだという。また一日のコストは1〜2ドル程度らしい。
 「う〜ん、私がスレントロールを飲んでも良いのかしら?」チラリとよこしまな考えが頭をかすめたところ、記事はしっかり警告を忘れていなかった。「スレントロールは犬のみが服用を許されている。人間や他のペットの服用はダメ」らしい。
 ニューヨークの動物医療センターは、肥満犬のためのプログラムを検討している。水中ランニングマシンを使った運動と食事療法のプログラムだとか。結局、人間だろうが犬だろうが、肥満対策は適度な運動と食事な訳やね。
 ルーシーが一昨年我が家にやってきて、(あ)は一時期ではあるが、随分痩せた。以来、自分自身の運動量も増えたはずなのに、体重はいつのまにか「盛り返して」きてしまっている。記事に登場する獣医さんは「人間の患者さんに『ビッグマックを食べるな』とは言えないが、犬なら『食べちゃダメ』と言えるはずだ」とコメントしていた。
 アイタタタ!耳が痛〜い!!