ふれあいと犬の幸せ〜Cesar’s Way

 シーザー・ミランに言わせると、アメリカの犬達は総じて運動とシツケが足りなくて、そのかわり愛情はふんだんに与えられているという。実際、犬は愛情溢れる動物だし、体にふれることは犬の世界においても、人間と生活を共にする上でも、大変重要だ。しかし、これはあくまで「ご褒美」であって、ご褒美としてではなく愛情を与えるとマイナスになるそうだ。
 この本には円グラフが描いてある。円の半分が「運動」とあり「犬と飼い主にとって最初で最も重要な活動」とある。片側の半円はさらに同じ大きさに分割され、一方が「シツケ」もう一方が「愛情」とある。シツケは「ルール、境界線、制限を設定する。また、与えられた任務と活動を一致させる意味もある。」、また愛情は「飼い主が犬と共にすべき最後の活動。また、犬が正しい行動をとった時、『ご褒美』として利用することもできる。(声をかけない方が望ましい)」とある。
 いつ犬とふれあえば良いのか?犬が運動と食事を与えられた後。やってはいけないことを止めて、飼い主の望む行動をした時。ルールやコマンドに従った時。犬が撫でて欲しいと飛びついてきたら、飼い主は本能的に、それに応えてやりたいと思うだろう。しかし、この行動は犬が自分の方が立場が上だと主張しているようなものだ。だから犬が冷静に従順になってから、体にふれる。お座りをさせて静かに待たせ、そこで初めて体を触ってやること。犬は自分が望むことを得るためには、一つしか方法がないことを直ぐに学びとるという。
 逆に、犬とふれ合ってはいけないのはどんな時か?犬が怖がっている時、ナーバスな時、支配欲が強い時、攻撃的な時、キャンキャンと鳴いている時、乞う時、吠えている時、どんなルールでも家のルールを守らなかった時。いけないことを止めただけでは、愛情を与えてはいけない。
 「サービス・ドッグとハンドラーを見なさい」と、氏は語る。盲導犬や警察犬、介護犬や麻薬探知犬など、さまざまな分野でさまざまな任務を帯びた犬が活躍している。犬に電灯のスイッチを入れさせ、バス停に案内させるためには、ハンドラーはまず自分のリーダーシップを確立しなければならない。そして、このようなサービス・ドッグが仕事中には人間とふれ合うことはない。一日の任務を終えて、初めて彼らは人間とふれ合うことができる。働いて愛情を得ることは、犬にとって自然なことなのだ。1年365日毎日24時間愛情を与えなければ、犬から何か大切なものを取り上げてしまうと考えるのは、人間だけだと言う。
 シーザー・ミランが考える「犬の幸せ」は、明確に「犬が犬らしくあること」だ。犬らしくない犬は、身体的にも精神的にアンバランスだという。アンバランスな状態は、問題行動を引き起こすことが多い。群れの中でリーダーの保護の下で、安心に安全に暮らすことができ、頻繁に一番重要な運動をすることができ、働いて食べ物や水を得ていると実感できれば、犬は幸せだ。また、リーダーが決めた一貫性のあるルールや境界線を守り、これらに従って暮らすことも、犬にとっては幸せなのだという。そして新しい経験や、自分で何かを発見する作業も、彼らには重要だ。特に、リーダーと信頼の絆によって結ばれていると感じられる時こそ、犬は幸せを感じられるという。その意味で「運動とシツケと愛情−この順番で」ということらしい。
 ルーシーは幸せか?今のところ(あ)は、そこまで考える余裕はない。だから、犬語が話せたらと思う一方、犬語が理解できなくて良かったとも思うのだ。