マネージメント〜”Outwitting Dogs”

 テリー・ライアン先生は、ルーシーが以前お世話になったN先生の師匠だ。ライアン先生のやり方は、Operant Conditioning(オペラント・コンディショニング)をベースにしている。犬が望ましい行動をとったら、飼い主が褒美を与えて行動を強化するというもの。犬を効果的に叱ったり罰を与えたりすることは難しい。犬と飼い主が両者とも無理をせずに、win-win(両者とも勝者)の関係を築けるという点で、オペラント・コンディショニングを勧めている。
 元来反抗的な性格のルーシーは、一歳前くらいから権勢欲を露わにするようになり、飼い主のリーダーシップを認めさせる必要が出てきた。また(あ)は自身の性格から、力づくで飼い犬に指示に従わせるのが嫌だった。(あ)は100%ライアン先生のやり方を踏襲し実行できた訳ではないが、このやり方では飼い主のリーダーシップを確立できなかった。
 本を読んでみて分かった。"leadership(リーダーシップ)"という言葉が出てこないのである。その代わりに"management(マネージメント)"とか"manager(管理者)"という表現が多く見られた。"manager(管理者)"についての記述を抜粋する。
 

 今日、犬のシツケに関して、有力なトレーナーの中で『マネージメント』を支持する人が多くなってきている。しかし、『マネージメント』とはどういう意味なのだろうか?
 犬のマネージメントは、会社の管理職に非常に似ている。会社の管理職同様に、飼い主は自分の犬に対して、どんな行動を求めているのかを決め、どうすれば犬がその行動をとるだろうかを理解するところから始めなければならない。たとえば、犬に対して管理者は目標を立てる。その上で犬にやる気を与え、目標を達成させるためのインセンティブを用意する。会社の管理職がボーナスなどのインセンティブを利用して、部下にやる気を与えるのと同じ事だ。
 犬の管理者は、問題に発展しそうな要因に注意し、大きな損害を引き起こす前に要因を取り除く方策を講じなければならない。たとえば猫も飼っていて、犬に猫の餌を食べられないようにしたい場合には、犬が届かない場所に猫の餌を移す。この問題をマネージメントによって解決したということになる。
 最後に、管理者も管理職も、部下の働きぶりに対して責任を引き受けなければならない。犬が何かに成功すれば、それは管理者の手柄であり、失敗すれば、それも管理者の責任だ。しかし、管理者は自分に厳しすぎてはならない。間違いは起こるものだ。効果が出るまでシツケのテクニックを磨き続けるのは飼い主次第だ。

 決して、ライアン先生やN先生のやり方が間違っているなどと批判をするつもりはない。ルーシーが他の犬と上手くコミュニケーションができ、知らない人にでも友好的なのは先生達のおかげだし、感謝している。その一方で、犬の性格や発達の状況によっては、一つのやり方が常に同じように有効とは限らない。
 個々の犬は、それぞれの発達段階で必要とするものが違うのだから、それが与えられない場合には別途補わなければならない。補うために別の方法を選ぶことだって必要なのだ。そのことをトレーナーの方々には理解していただきたいと思う。