一勝一敗一引き分け

 どうも飼い主に似て、ルーシーもズボラな性格らしい。ズボラなボーダーも存在するのねぇ。・・・って、もしかしてタヌキなのかもしれないが。
 この2週間の課題は大きく分けて3つ。
 + バック→ターン→バックのターンを、できるだけ離れた場所でできるようになること
 + ラージ・サークルを少しでも大きくすること
 + なんでも良いから新技をひとつ完成させること

 バック→ターン→バックというのは、大まかにいえば、頭から突っ込んで車庫に駐車していた車を、一旦車庫から出して、再度お尻から車庫入れするイメージの技だ。犬が車庫(ハンドラーの足の間)に入る際、バックで進む距離が長ければ長いほど良いようだ。最初に教えた際、手に持ったエサで釣って体を180°回転させるようにしたせいか、ルーシーがターンする場所は(あ)の手元になってしまう。(あ)は短い腕を一生懸命に延ばして、遠い場所でターンさせようとしているのだが、なかなか上手くいかない。(た)に買ってもらった「伸縮孫の手」にカンガルーのアキレスをくくりつけ、ルーシーの鼻先にちらつかせて再度教え直す。カンガルーだぞ、お母さんだって食べたことないんだから。
 やってみて一つ気が付いた。(あ)が出すコマンドは「バック」「ストップ」「カム」「まわれ」「バック」だった。カムという指示では、(あ)にはルーシーが自分のところに来ることを意味しているが、ルーシーにとっては(あ)の元へ正面を向いて行くことを意味するらしい。そこで「カム」を抜いて「まわれ」と言い、最後の「バック」の代わりに「センター」と言ってみる。センターは(あ)の足の間にいて同じ方向に動くことだ。不思議なのだが、このコマンドだとルーシーはターンした後はバックで足の間に入ってくる。ひとつひとつのコマンドについて、(あ)が意としていることと、ルーシーが理解していることが違っていたのだ。気が付かなかったけれど、コマンド一つを工夫するだけで、できるようになることもあるんだなぁ。今度はこっちがコマンドをきちんと出してやらないといけないな。
 ラージ・サークルは、簡単そうに見えたのだが、今まで習った技の中で一番苦しんでいる。ルーシーの場合は、バック→ターン→バックよりも格段に難しいと言えるだろう。なんとかアラウンドとは違うこと、(あ)を中心として右回りに回ることまでは理解できたが、まだまだ(あ)から遠くに行かない。振付ではラージ・サークルからターン、バックで(あ)の足の間に入るので、そのことを知っているせいか、ルーシーは大回りで回ってはくれないのだ。それに左半分は大きく回るのに、右半分はなぜか近づいて来る。振付ではなく、ひとつの技として練習してみる。
 庭でコーンを円形に並べ、それに沿って走らせる。コーンの内側を通ろうとしたら、手でルーシーの体を押し出す。そして足を踏み出し、大きな手振りで「もっとライト!」と指示を出す。これを繰り返していたら、ルーシーは突如動くのを止めた。普段は与えないチーズを使っているのに釣られない。怒られたと思ったのか、なぜか庭の隅に行って休んでしまう。ストライキかよ!
 うーん、オリンピックの団体競技に出場するような体操選手だって、得手不得手はあるもんなぁ。鉄棒が得意でも、あん馬が苦手っていう選手だっているだろうよ。できなくたって良いんだよ。頑張って頑張ってダメならさ。だけど頑張る前にあきらめるのは卑怯だろ。
 ・・・と本人に言ってやりたいが、どう言えば分かってもらえるんだろ?
 最後に新技だが、ルーシーは「ゴロン」ができるようになった。なぜか左方向の方が良い。右方向は「よっこらしょ」という感じ。まだまだ両方向ともスムーズに転がることはできない。股関節に響くようなら片方だけになるかも。
 という訳で今のところ、一勝一敗一引き分けだ。ま、昨日より今日、今日より明日に白星が増えれば良しとしよう。