実験 Virtually, Daddy

 独りお留守番をしている賢いワンコに、大好きな家族がテレビを通じて呼びかけたらどうなるかーー。ペット関連のテレビ番組ではおなじみの企画だ。大体の場合、こういうワンコは賢いから(伏線)、家族の顔を画面に見たり声を聴いたりすると、クンクン鳴いて恋しそうにする。
 たまたま(た)がテレビに出たので、録画したものをルーシーに見せて実験をしてみる。ちなみにルーシーは、2日ほど(た)に全くかまってもらっていない。時々ルーシーは階段下に陣取って(た)が二階から下りてこないかと見ていたり、玄関先で耳をそばだてて(た)が戻ってこないかと調べていた。シメシメ、これは期待できるかもヨ。
 実験方法はいたって簡単。リビングにいるルーシーの側で、まずはハードディスクに入ったファイルを呼び出し、そのまま再生する。データでは最初に(た)の姿が画面に映り、その後声も流れる。
 (あ)は、ルーシーには、画像で相手を判断することはできないと予想していた。できるとしたら、手がかりは声だろう。(た)の声が聞こえない限り、ルーシーはテレビの方向さえ見ようとしないはずだ。声が聞こえたら、慌てて相手を探すだろう。相手がテレビの中だと分かったらテレビの裏を探すか、もし「何よ、怪しい」と警戒して吠えるか、または「お父さん、出てきて」と吠えて要求するか。
 全く予想しなかった結果が出た。ルーシーは全く気がつかなかったのだ。それどころかオモチャを探してウロウロ。始めは(た)の映像だけだからしかたがないけれど、声が流れても知らん顔。こちらは慌てて巻き戻して再度再生。二回目を流しても知らん顔。カーテンの裾を鼻でつついてクンクン。オイオイ。
 全くラチが開かないので、再生しながら「ルーシー、お父さんだよ」と言ってみる。・・・ヤラセである。ところが、ルーシーは廊下に出て玄関先へ。違うっちゅーに!ルーシーの目にはテレビの画面が映らないのか?画面を指さし「ルーシー、お父さんだよ」と言ってみる。タイミング良く(た)の声が流れる。耳が立ち、ルーシーの動きが止まった。む、ようやく理解したか!?
 ルーシーは(あ)を見て大笑い。おおお、とうとうご主人様の声を認識したか!!
 次の瞬間「ふわぁぁぁ」と大あくび。なんじゃい、そりゃ。


 当然のことながら、画面の中の(た)はルーシーに呼びかけた訳ではない。だから分からないのかな?
 それじゃ、チャン・ドンゴンの「アナタが好きだから!」に反応したのはなぜ?