無視作戦の結果

 ルーシー無視作戦の結果は、ジャブのように微妙〜に効いていたようだ。夕方まで話しかけることもなく、ご飯も与えたら、本人が食べている間は見守ることもなく姿を消し、廊下を通る時も目を合わさない。こちらは別に「怒ってるんだぞ」オーラを出している訳ではないが、きゃつもなんとなく「今日のお母さんは、なんだか変だ。これは言うことをきいた方が良さそうだ」と思ったようだ。
 普段の生活では一日中一緒に家の中にいるけれど、散歩とご飯、練習と夜のくつろぎタイム以外はあまりルーシーをかまうことはない。だから、かまわれないことに関してはルーシーは慣れているし、罰だとも思っていない。ただし声をかけられない、目を合わせてもらえないというのは初めてだから、とまどっていたようだ。
 作戦の微妙〜な効果は、夕方のできごとで分かった。
 ご近所の奥さん(ルーシーが大好きな人。昔は会うたびウレションしてた)が相談のため我が家を訪れられたのだが、その時(あ)はリビングで散歩の用意をしていた。玄関先にいたルーシーは、リビングの物音を聞いて「そろそろ散歩ね」と思っていたのだろう。ところが、奥さんに呼ばれて(あ)が玄関を出て行こうとした時、慌てて立ち上がり、こちらを見て「フゥゥゥウ?」と声を出した。「エ?散歩じゃないの?」
 もちろん声はかけない。目を合わさない。ルーシーがいないかのように知らん顔で家を出た。
 1時間弱ほどして家に戻り、ルーシーを連れて散歩に出た。小学校前の植え込みは、犬たちのBBSになっているらしく、ルーシーは草むらをかき分けレスを探す。本来、足が濡れるのが大嫌いなのに、雑草が生い茂り雨で濡れたこの場所に入るのには躊躇しない。ところが、昨日は、それまで静かだった(あ)が「ルーシー、行かないよ」と声をかけたら、ルーシーは「あ、そ」と直ぐにあきらめた。No.2をさせるべくコマンドを出したら速攻で2発。やればできるんじゃん。
 残念ながら公園の芝生も水浸しだったので、ボール遊びをしたりして、どれだけこちらの指示に従えるのかを確認することはできなかった。紐付きボールで遊ぶとなったら、生来の権勢欲がムクムクふくれあがってくるかもしれないけれど。
 夕食の時に少しだけダンスの復習をしてみる。メリハリが大事だと分かったので、こちらの頭が痛くなるほど高い声を出して大げさに褒めたたえる。すると、ルーシーは驚くほど目をキラキラさせて、やる気を見せた。動きもキビキビ。気分が違うと、こうも違うものなのだろうか。
 一日中お留守番をさせるのもなんだけど、一日中一緒にいるってのも、あまり良くないのかも。飼い主のありがたみを感じてもらうために、再就職しようか。