土曜日のシツケ教室のことを書く。前回の様子を見た(た)に「ルーシーがやる気を失うのは、集中力が持たないせいからだと思う」と指摘され、(あ)は考えられる手を打った。

 (1) 授業の時間を午後4時から午後6時20分に変更
 (2) 牛スジを持参 (市販のおやつでも構わないのだが、味が濃いらしく喉が渇くようだったので)
 (3) 褒め方にメリハリ(時々、ルーシーが驚くような高い声で褒める)
 (4) 新兵器導入
 (5) 先生に授業内容を相談

 「新兵器」というのは、以前サン君のママさんから教えてもらった冷却剤入りマフラーである。ホームセンターは屋内で冷房が効いているはずなのに、動くと人間も大汗をかく。ルーシーと一緒に(あ)も、マフラー装着で授業に臨む。まるで犬と一緒に交通事故に遭い、両方ともむち打ちになったみたいだけど。ルーシーはどうか分からないが、こちらは快適である。授業中に頭がボーっとすることもなかったし。
 「先生に授業内容を相談」では、今は伴わなくても、ゆくゆくはルーシーが一時間集中できるようにしたいから、その点を重視して授業の内容を考えて欲しいとお願いした。
 確かに、青空ちゃんがいる時といない時では、ルーシーのやる気は違う。しかし毎回青空ちゃんに出動してもらう訳にもいかないし、出動してもらったからといって根本的な問題解決にはならない。またドッグダンスができることは重要だが、ドッグダンスは(あ)とルーシーにとっては、手段であって目的ではない。だからダンスにこだわらず、ベーシックに戻っても良いから集中力の持続時間を延ばしたい。そのために必要なトレーニングをしていただきたい。無理だし失礼だと分かっていながら、先生に申し出る。
 「わかりました。こまめに休憩を入れましょう。そして今日は、実験的に、いつもと変えてベーシックから始めましょう」と、A先生。青空ちゃんの場合、トレーニングを1時間していて、ダンスが45分、ベーシックが15分だという。順番としては今はダンスのトレーニングを先にやってから、「待て」を15分なのだそうだ。ただし、以前は「待て」を先にやっていたこともあるという。順番については、先生自身もよく分からないそうだ。犬の個性もあるだろうから、青空ちゃんに有効でも、ルーシーにとってはどうかは分からないし、そこは大した問題ではなさそうだ。
 「ルーシー、『待て』はどうですか?」と訊かれたので、「『待て』は得意な方です」と(あ)。「『待て』は伏せていれば良い訳だし。基本的に何もしなくて良いのは得意なんです。」すると先生は呆れたように「そこまでグータラ?」「本当に、ルーシーを見ていると勉強になるわぁ」
 A先生をして、以前は「人間らしいというか、なんというか」、この日は「勉強になるわぁ」と言わしめたルーシー。飼い主としては、笑うしかない。
 (あ)がルーシーの見えない場所に隠れると、案の定ルーシーは目の前に差し出されたおやつを舐めた。飛んで戻ってルーシーを叱る。その後は、ルーシーもおやつや先生から顔を背けてガマンしていた。見ないようにしないとガマンできないっちゅーところが、ルーシーらしい。
 ダンスは依然パーツごとに進めるかたち。手を抜かせないためにも、曲を通しての練習は最後の最後までしないことにした。ただし技と技の間のツナギは必要なので、少しずつ練習する。マフラーのおかげだろうか、ルーシーは先週よりも動きが良かったように思う。
 前回の授業以来、(あ)の中で少し整理がついたと思う。「ダンスは目標だけれど、そのためだけに教室に通っている訳ではない」と言えるようになったのは、自分でも良かったと思う。
 しかしルーシーというヤツ。ドッグ・トレーニングのプロから見ても、一筋縄ではいかないらしい。声には出さず「なんで、オマエが私の犬なんだよ」とギト目で見たら、足元で「お母さん、おそろいだねぇ」とむち打ちマフラーをつけて大笑いしていた。やれやれ、神様も罪なことをなさるなぁ。