じゃ、私は誰?

 ルーシーは少なからず(あ)のことを「怒らせたら怖い人」と認識しているらしい。残念ながら、なぜ自分が怒られるのかまで考えようとしないけれど。
 (あ)が見る限り、ルーシーは(た)を「ワガママをきいてもらえる人」と認識しているようだ。夏休みの間、ルーシーは再三要求吠えをしていたが、一昨日(た)が外出したら昼寝ばかりして非常に静かだった。目の前で(あ)が駐車場の扉を開けても、ルーシーは鼻を鳴らして「私も乗せて」と訴えるものの、吠え続けるということはなかった。二人に対する態度は明らかに違う。
 昨日の夕方、散歩から帰ってきた(た)の表情は暗かった。ルーシーに噛まれたのだという。
 公園で遊んでいたところ、雲行きが怪しくなってきたのでリードを着用して帰宅しようとした。それまでフリスビーで遊んでいたルーシーは、よほど楽しくて帰りたくなかったのか(た)の手首あたりをガブリと噛んだという。傷の様子から見て、単に歯を当てたという訳ではない。マジのようだ。
 ルーシーの頭の中で(あ)との関係は、ほぼ固まりつつあるように思う。理想的ではないにしろ、ルーシーは元来反抗的な性格だから、少々(あ)のことを怖い人と認識するのも、しかたがないことなのだろう。怖い人に怒られるから悪さを止めよう。正しくはないが、それで指示に従えるのなら結果オーライだ。
 ただし同様に(た)との関係も固まりつつあるとするならば、今の状態で良いのだろうか?そして、それは(あ)がどうにかすべきことなのだろうか?
 先日「ルーシーに横山のヤッさんが取り憑いている」と書いたが、車の中でのルーシーの態度も違うのだ。(あ)が運転する場合、ルーシーは出発時と駐車場が近づいた時に盛大に吠える。それ以外はあまり吠えることはないので、(あ)は自分の運転が苦手でヘタだから、同乗のルーシーも緊張してるんだろうと思っていた。(た)が運転する場合、もちろん走行距離も長い訳だけれど、ルーシーが吠える頻度も増える。同乗するこちらは、頭痛がするほどだ。
 「一体、(ルーシーは)アンタのことを何だと思ってるんだろうねぇ」
 「知らん」と(た)。ふてくされた表情である。
 「もしかして『タクシー運転手』と思ってるんとちゃうか?」
 横山のヤッさんが「運転の仕方が悪い」とタクシー運転手に文句を言った話は、関西では有名だ。そうならば、ヤッサンが乗り移ったルーシーが、赤信号で「止まるな!走れ!」と要求するのも、当然といえば当然なのかも。
 とすると、ルーシーは私のことを誰だと思っているんだろうか?いや、私は誰の役を演じれば良いのだろう?ヤッさんにとって、頭の上がらない人。 
もしかして・・・キー坊?
 は〜(タメイキ)、小さなことからコツコツと頑張ります。