当初の予定では、この時期にはダンスを一曲通して踊れるようになっていたはずなのだが・・・。暑さとグータラ癖でルーシーがやる気を失い、授業中にたびたびストライキを起こすため、全く仕上がっていない。
こんなので間に合うのかッ!?
と、思うと「ま、良いか。ダンスをすることが目的じゃないんだし」などと、楽な方に流れていってしまいそうな自分が怖い。
 前回の曲では、最初の部分からトリックを覚えさせ、少しずつ長くして全体を作っていった。ところが長くなれば長くなるほど、一つ一つの動作がなおざりになり、ピシッと決まらない。伏せさせても前足の肘部分が床から浮いていたり、ターンが綺麗に一回転しなかったりと、ルーシーは手を抜くようになった(もしくは、余裕がなくて一つ一つをきちんとこなせなかったのかも)。今回は全体をバラバラにして個々のトリックを覚えさせ、ツナギを入れながら連続技を覚えさせる。連続技をさらに繋いで一曲全体を通して踊れるようにしようと考えていた。だから曲に合わせて踊るのは最終段階。それまでに飽きさせないようにと、連続技も先月後半から教えるようにしていた。
 ・・・で、現在。まだまだ完成度の低いトリックがあり、個々の動作のスピードと得意と不得意の差が大きい。たとえば、「アラウンド→くるん」だ。両方とも(あ)の足の周囲を回るという点では同じで、違いは頭が先かオシリが先かという点だけだ。アラウンドは前回の曲で教えているので既に定着しているはず。一方くるんは今回初めて教えた新しい技だ。ところがアラウンドが超遅で、くるんが超速。スピードが得意度やお気に入り度の指標ならば、くるんの方が(オシリから回る方が)得意で好きということになる。またコマンドを出した時の反応も違う。ハンドシグナルと声で「アラウンド」と指示しても、ルーシーは一回では動かない。「くるん」はハンドシグナルなしで、声だけでも「よろこんで〜」と回ってみせる。何なんだ、この違いは?
 それでも先生は褒めることは忘れない。「ベッグ、上手くなりましたね〜」「ウィーブが綺麗です」ドッグトレーナーって、人間も褒めなきゃいけないから大変だなぁ。ルーシーのベッグは、まるで首を伸ばしたスッポンで、顎と脇を締めた青空ちゃんのとは全然違う。めっちゃ格好が悪い。こんなんで決めポーズになるのかなぁ。「良いんじゃないですか。それがルーシーの味ですから」・・・上手いこと言うなぁ。
 褒め上手のA先生をもってしても褒めようがないのが、ルーシーのジャンプ。このプログラムを作ってもらった時から、うすうす分かっていたことだが、やはりジャンプが課題として最後まで残っている。
 ルーシーがジャンプを苦手としている原因は(あ)にある。症状こそ出ていないけれど股関節形成不全だから、これまであまりジャンプをさせてこなかった。狭い家の中では練習できないということもあるが、第一の理由は、獣医さんにフリスビーなどでのジャンプはダメと言われているからだ。「ダンスでのジャンプは、どうでしょうか?」と訊くと、獣医さんは「う〜ん」と悩んだ後で「あまり激しいのや、何回も跳び続けるのは避けてください。」とのこと。
 これまでにA先生とも話してみたのだが、全くジャンプ技のないダンスは、ダンスとして認められないようだ。特に犬がボーダーとなれば、見る側は当然ジャンプを期待しているという。「実際、技を教えるということでいえばラージサークルの方が断然難しいけれど、見る側は知らないですからね。」そう、距離を競うフリスビー競技やアジリティ、フライボールとダンスが違うところは、見る側のことを考えないといけないというところにある。で、今回のプログラムではジャンプはわずか2回である。
 それでも、相変わらずルーシーは「あ、よっこいしょ」と跳び、時にはこちらの足に体をぶつけてしまう。公園の芝生でちょっと練習しないとなぁ。
はぁぁぁぁ〜、間に合うのか、ホント。