娘は頭が痛い

 夕方の散歩の前に庭で練習していたら、アニーちゃんのお父さんとお母さんが通りかかった。特にお父さんは、ルーシーが我が家に来て最初の頃に出会い、大好きな人に分類されている。
 アニーちゃんは、この春、亡くなっていた。手厚いケアをされて旅立ったアニーちゃんは、天国でも生前どおりの幸せそうな笑顔でいるに違いない。
 半年を経て、お父さんは「また犬が欲しいんだけどねぇ」とタメイキをつかれた。これまで何匹か犬を飼い最期を看取る度に「もうイヤだ」と思ったそうだ。それでも保健所に連れて行かれる犬を引き取る等、犬の方から自分のところへやって来たりしたものだから、側にはずっと犬がいたのだという。アニーちゃんも、国内を旅行される時には必ず一緒に出かけていた。そのような生活が当たり前になっていたから、犬がいない今、少し寂しいそうだ。
 お母さんが「寂しいけれど、これからまた15年って(自分たちが)どうなってるか分からないでしょ」と仰る。また子供さんは全員海外におられるため1ヶ月単位で家を空けるとなると、その間の犬のことも考えなければならない。犬を飼う上での責任を十分に理解されているからこそ、悩んでおられるのだろう。自分でも驚いたが「ウチで良ければ預かりますよ」とポロリと口から出てしまった。すると、お二人は「ありがとうございます。でも(問題は)それだけじゃないので」と笑われた。
 (あ)個人としては、ルーシーを連れての旅行は考えられない。まず車を運転しないといけないし、ヤツの動向を見張らないといけない。また宿泊先に迷惑をかけていないかどうか気を配らないといけないから、とてもリラックスできない。寝不足間違いなしである。一方、ペットホテル等に預けるのには非常に抵抗がある。旅行するために、いろいろと手配や気配りをしないといけない。それを考えただけで、旅行したいという気が失せてしまうのだ。
 最近、母の旅行熱が高まって「アンタ、来年の春にエジプトに行かない?」などと言い出した。「お母さんには、これが最後になるかもしれないから」と言う。なかなか説得力のある殺し文句だが、過去3回、これで海外旅行のお供をさせられた身としては「またかい」という感じだ。そして最近の旅行ではテロとニアミスという経験をして、帰国後3日間寝込んでしまった。
 「犬がいるから」「パスポートが失効したから(わざと更新しなかったんだけど)」と断ると「アンタにとって、お母さんは犬以下になってしまったのね」と恨めしそうに言う。海外旅行のお供をしないから、犬以下の扱いを受けているというのか?要求が通らないから拗ねるなんて、自分の母親ながら「ルーシーみたいな人だなぁ」と呆れてしまった。