ボトムライン

 A先生からメールで「ストライキをすることなく、二日とも踊られたのは素晴らしいことだと思います。」との慰めの言葉をいただき、落ち込むと同時に、ヒジョ〜に複雑な気分を、この2日間ほどシツコク反芻していた。本番の日は両日とも気温が高く、確かにルーシーがストライキを決行する可能性は高かった。しかし、それはボトムラインであり、こちらとしては、あくまで「振付すべてを踊りきる」ことが目標だったからだ。
 ストライキ防止も踊りきることも、つきつめればハンドラーの力量の問題だ。どこまで犬にやる気を出させ、本来の力を発揮させるか。現に同じステージに立った飼い主さんの中には、集中が途切れそうなワンちゃんの注意をグイグイと引き戻している人もおられた。冷静に判断して引き戻しができなかったのは、(あ)がハンドラーとして力不足だったからだ。
 ちなみに、ルーシーと(あ)が他のペアと決定的に違うことがある。それは「リードするのは犬」ということだ。(あ)が間違うとルーシーは決まって「お母さん、違うよ」と立ち止まる。本番の動画では、ルーシーが立ち止まって(あ)を見つめるシーンが多く見られた。
 犬にコマンドを出して先導役を務めるはずの飼い主が、実はリードされているという、この矛盾!以前に通っていたシツケ教室で、N先生は私たちを見て大笑いされていた。(あ)が振付を理解していないのに、ルーシーはしっかり理解していて、こちらのコマンドを待つことなく踊って見せたからだ。「お母さん、ルーシーにリードされてるよ!しっかり!」そんなルーシーの良い部分も今回活かせなかった。そう思うと、本当にルーシーに申し訳なく思う。
 (あ)が自分自身に失望している間、ルーシーもなんとなく沈んでいた。もしかしたら彼女にもボトムラインがあって、それは「お母さんを間違わせることなく踊らせる」ことだったかもしれないな。
 本当にゴメンネ、ルーシー。