三度の飯より

 昨日(た)は親戚の通夜に出席するため、会社を早退して帰宅した。(た)の姿を見るや否や、ルーシーはソワソワ。サークルの中から飛びついて「どこか連れて行って」とアピール。
 さすがに我が家の『結構毛だらけ号』をそのまま運転していっては先方に失礼だ。という訳で、(た)は洗車しようとキーを取り出した。ルーシーはキーホルダーの鈴の音を聞きつけて鼻をピーピー。期待に胸を膨らませ、サークルの中をグルグル。
 4時近くになり(あ)が夕方の散歩の用意を始めたら、ルーシーは玄関のドアをくぐり、門に向かって突進。(あ)が足を踏ん張って体を押さえ、庭に入って「ルーシー、シーシーは?」と言うと、普段なら全く知らん顔で雑草食いをするのに、慌てて用を足した。門を出て車に突撃するところを、リードを引っ張って押しとどめ「ルーシー、ウンウンしに行こう」と促す。本人はシブシブ(あ)について来たが、(た)に置いて行かれるのがイヤらしく、何回も振り返り車に向かおうとする。真っ直ぐに歩かないので、(あ)に足を踏まれて我に返る。小学校脇の遊歩道まで突撃態勢で進む。急いで用を足して家に戻ろうとする。
 (あ)が「ルーシーは、お母さんとお散歩だよ」と言うと、ルーシーは「そんなぁ」という表情。中学校の先あたりまで、ルーシーは恨めしそうな表情で振り返り振り返り、なかなか進んでくれなかった。
 いつものように公園でボール遊びをして、スーパーで買い物をして帰宅することにした。スーパーからの帰り道、ルーシーはいつも以上にリードを引っ張る。遊びで疲れていると、帰り道にリードを引っ張ることは少ないのに。おまけに今日は寄り道までしたのに。また、普段はもう一つの小学校前の植え込みでシツコイくらいニオイを嗅ぐのに、それすらも忘れているようだ。ゼイゼイ言いながら、どんどん前に進む。何なの、コレ?
 青信号が点滅するところを走って渡り家に戻る。駐車場の前まで来たら、ルーシーは立ちつくした。「お父さんがいない!車がない!」
 ルーシーは、(た)が車で出かけることを、しっかり覚えていたらしい。(あ)と一緒に一時間半以上も散歩をしても、忘れていなかったようだ。
 夕食を終えてリビングでゴロゴロしていても、お父さんのことが気になるらしい。この日はリビングから廊下に出て玄関先で待っていた。しばらく待っても帰って来る様子はなく「ルーシー、ネンネしよう」と声をかけられると、素直にクレートに入った。
 それから1時間ほどして(た)が帰宅。それまで静かに寝ていたルーシーは、物音で目を覚ましたらしく「ワン!」。数回鳴いて「クレートから出せ!車に乗せろ!」と訴えた。まだ車のことを覚えていたらしい。どんだけ好きやねん!
 ルーシーは、(た)に訴えてもクレートから出してもらえないことが分かり、フテ寝に戻ることにしたようだ。その時の「アゥゥゥゥ」と言う声がなんとも無念そうで、こちらは寝床で笑ってしまった。