警戒心

 犬の警戒心は成長するんだろうか。このところ頭の痛いことが続いている。
 散歩中、特に黄昏がせまる公園で、自分が遊んでいる時に知らない人が近づくと、ルーシーは威嚇するようになっていた。そのため、知らない人が近づいてきたら、(あ)は急ぎルーシーを呼び戻し自分の足の間に座らせて、その人が通り過ぎるまで待たせる。そうすることで唸ったり、吠えたりするのを防いできた。ところが、威嚇する相手は知っている人にまで及ぶようになった。原因の一つは目が悪いからと思われた。知っている飼い主さんにまで間違って吠えたてる。相手に噛みつくなど攻撃することはないし、声をかけられたら「あ、間違えた」と簡単に引き下がるので、幸いなことに今のところ大きなトラブルを迎えていない。それでも、これがエスカレートするのではないかと不安になってきた。
 言い訳をするつもりではないが、(あ)はルーシーをシツケ教室にはパピークラスから通わせている。ボーダーコリーという難しい犬種をコントロールすることも目的だったが、公園で他のワンちゃんと遊ばせる以上は、最低でも社会化とコミュニケーション方法を学ばせたいと考えた。人とも犬とも、問題なくつきあえる犬にする。そのためグループレッスンから始めた。
 おかげで「人もワンコも大好き」というのが、数少ないルーシーの長所になった。もちろん犬同士で喧嘩もしたが、それでも大きなものに発展することはなく、次に出会った時には確執を残すことも少なかった。そのうち手持ちの問題の中では、(あ)のリーダーシップの方が大きな問題になってきた。シツケ教室を変えたのも、こんな時期だった。
 次の教室は−−今も通っているが−−プライベートレッスンだ。他のワンちゃんと触れあう機会はなくなったが、その分、先生にはいろいろと相談に乗って頂けるし、他のワンちゃんと成長具合を比較して落ち込むこともなくなった。少しずつルーシーは(あ)を怒らせたら怖い人と認識するようになってきた。呼び戻しの確率は90%にまで上がった。飼い主に対して唸ることや歯を剥くことは、未だにガマンできないらしいが、それでもイケナイことだと理解したらしく、顔を背けて、こちらに見られないようにするようになった。
 一方、人間の方は、手持ちの問題が減った訳ではないけれど問題を大きくしないことを学んだ。先に手を打って、ルーシーを極力叱らないで済むように努めた。ところが、これまで問題ではなかったものが問題に加わってしまった。社会化の努力が足りなかったということなんだろうか?
 (あ)が不安を感じる理由は、最初は眉をひそめる程度だったものが、時を経るにつれてエスカレートする傾向を見たからだ。車に乗ると興奮して騒ぐクセもア○ア・ストップでは全く解決できず、今ではマズル・ベルトをしても吠えるようになった。知らない人への警戒も、知っている人への威嚇にまで発展してきた。今、手を打たなければ大きな問題になりはしないだろうか。
 自分ではボーダーコリーという犬種は警戒心が強いことを重々理解していたつもりだし、そのために手を打ってきた。ルーシーをリラックスさせるために、マッサージとストレッチの本も購入した。マッサージには鎮静効果があり、飼い主との絆を深めて犬の信頼感を高められると聞いたからだ。ルーシーが、飼い主といれば安心できると思ってくれれば、警戒心を和らげることができるのではないか。
 一体、何が足りないというのだろう。何が間違っていたんだろう。どうしたら良いのだろう?