ピー太とルー吉とクー吉

 ピー太は相変わらず球拾いと円盤追いに精を出し、その上に障害物競走でも次点になるほどの働き者じゃった。ルー吉は、いつまでたっても、何をやっても中途半端なグータラ者じゃった。このように全く似ても似つかぬ二匹は仲が良いままで、ピー太が円盤を追いかけると、後ろには必ずルー吉がいてピー太を追いかけるのじゃった。
 一方ルー吉には、もう一人の友達クー吉がいた。クー吉は体格こそ小さいが肝っ玉が据わっており、友達は多い。友達に合わせて遊び方を変える遊び上手。幼稚でわがままなルー吉には、心おきなく取っ組み合いができる数少ない友達じゃった。
 ルー吉とクー吉が、いつもの取っ組み合いにも飽きて、それぞれ球拾いをしていると、そこへピー太がやって来た。ルー吉は、いつもなら円盤追いをするピー太にベッタリへばりつくのだが、今日は紐付きの球も追いかけたい。木の陰に隠れて「ワシは球拾いで忙しい」とピー太を無視するフリをした。
 これにはピー太も驚いた。「どうしたことじゃ。ルー吉はいつもワシにへばりついているのに、今日は木の陰から出てこない。さては、木の陰に何か良い物があるに違いない。」ピー太は木の陰を探すことにした。
 ところが木の陰には、美味しいモノも遊べるモノも落ちていない。ピー太は急につまらなくなった。するとクー吉が誘ってきた。
 「ピー太、ワシと遊ぼう」ピー太とクー吉は、体格も足の長さも違ったが、クー吉はどんな遊びもできる万能選手じゃった。単純な駆けっこでは負けてしまうけれども、小柄な体格を活かしてクルリと体を変え、予想しなかった方向へと走りだす。体の大きなピー太を怖がったり、ひるむことなく「遊ぼう!走ろう!」と誘ってくる。

 これにはピー太も嬉しくなった。円盤や球がなくても楽しく遊べるかもしれん。

 ところが何か口にくわえないと、どうも居心地が悪い。あぁ、円盤さえあればなぁ。ピー太がそう思っていると、ピー太の母さんが円盤を出してくれた。ところが、ピー太は自分の円盤では満足できなかった。「そうじゃ、ワシが欲しいのは友達のものじゃ!」それでも、友達の球や円盤は簡単に見つからない。ピー太はしかたがなく、クー吉のカバンをくわえて走ることにした。クー吉のカバンには人形がついており、ピー太にはとても洒落て見えた。
 「ホレホレ、クー吉、ルー吉、ワシを追いかけろ」ピー太は得意げにカバンを見せびらかした。しかし二匹には、どんなに洒落ていても、ピー太の口にあるのはカバンにしか見えず、欲しいとは思えなかった。こうして、三匹の追い駆けっこはおしまいになった。

「クー吉、ルー吉、早くワシを追いかけろよ。日が暮れてしまったじゃないか!」