「ひょうたんから・・・

 ボール」って、訳分からないよなぁ。ルーシーは元来ボールには全く興味がない。ルイルイのボール拾い競争では、お父さんが代理でボールをくわえる程である。→これは、今でも本人にとっては、かなりのトラウマになっている模様。
 唯一興味を持っているのが紐付きボール。ヒモが付いているせいか、ひっぱりっこができる。色はアイボリーなので枯れた芝生に転がすと見つけ難いはずだが、穴が開いているので空中を飛んでいる間に「ヒュー」と音がする。ルーシーは、これを頼りに追いかけているようだ。
 毎日使っていると、ボールも壊れていく。ゴムが割れてきたり、組紐状のヒモがほどけてきたり。それでも900円以上と値段は高いので「こりゃ、ゴミ箱行き寸前だな」と思っても、最後まで酷使し続けている。
 夕方、ゴミ箱行き寸前の紐付きボールで遊んでいると、ひっぱりっこの最中にヒモがスポンと抜けた。慌ててくっつけようとするが、ヒモが付いていた穴は小さくて、針か何か道具がなければヒモを通せない。辺りは夕闇が迫り時間がない。曇り空を見ていると明日は雨かもとも思う。今日はしっかり運動させておかなければと思うが、こりゃ、どうしたもんか?
 我ながら、こういう焦った時はバカみたいなことをやってしまう。「ルーシー、ほにゃらかは〜!」と叫びながら、ボールだけを投げた。聞いたこともない叫び声にルーシーは一瞬ビックリするが、次の瞬間は「新しい遊びなのね」と走りだす。ボールを追いかけて、手元に持ってくる。本人はボールにヒモがないことに気づいていないようだ。大げさに喜んで褒めちぎる。
 「ほにゃ、ほにゃ、ほにゃ、ほにゃ、ほにゃらかは〜!」と言いながら、驚くルーシーからボールを取り上げ、再度投げる。ルーシーは「アレ?ひっぱりっこは?」という顔をしたが、それでもボールを追いかける。なんだか分からないが、ともかく手元に持って帰ってきた。
 次にゴールキックよろしく、手足を振り回しながらボールを思いっきり蹴る。「行くぞ、行くぞ、行くぞ〜」と声をかけると、ルーシーは「お」という顔をして、またまた追いかける。なんだ、やり方次第でボール遊びもできるんじゃん。時折、大げさなフォームで空振りをするが、それすらもルーシーにとっては新しい刺激らしく、芝生の上で伏せて笑いながら待っている。
 ボールで遊べたら、家の中とかスペースのない場所でも遊べるもんね。できたら、ボールに興味を持たせないなぁ−−−アホ丸出しの叫び声や疲れるパフォーマンスなしでも。