ネパールの牧羊犬

 ボーダーを飼っておられる他の飼い主さんからは「朝一番に起こされるんですよ」というハナシをよく聞く。空が白み始めたら飼い主の側でウロウロしたり、散歩に行こうと要求したり。中には気持ちよく寝ていたところに鼻を押しつけられ、あまりの冷たさで目が覚めるという飼い主さんもいる。牧羊犬だから「朝からお仕事」という気質が遺伝子に組み込まれているのかもしれない。ちなみに「なんちゃってボーダーコリー」の飼い主である我々は、未だそんな経験をしたことがない。 
 今朝は超寒いのに(た)がいつもより早起き。昨晩会えなかったルーシーをクレートから出して、出勤の支度をしていた。続いて(あ)が洗濯物を持って階段を下りると、ルーシーは何やら廊下で小さくガウガウ言いながら、和室の扉に体当たりしている。いつものことなので放っておく。そのうち(た)が家を出る。こちらは開けっ放しのクレートの扉を閉めて、リビングに入りルーシーの朝食の準備やら掃除やらを片付けていく。
 妙に静か・・・。独りで廊下でフテ寝をしているのだろう。それともトイレシーツでもビリビリに破ってストレス発散でもしているのかな?
 掃除の間、閉めておいたリビングの扉を開ける。ふと見ると、廊下にはとルーシーがいない。洗面所にもいない。玄関の三和土にでもいるのかと思ったが、ここにもいない。
 ん???
 よくよく見ると、ちゃっかりクレートの中に戻って二度寝していた。つい最近まで自分でクレートの扉を開くことができなかった。今朝は扉にカギをかけてはいなかったものの、自分で開けてクレートに入り、ご丁寧に扉を閉めていた。ズボラなんだか丁寧なんだか、よく分からん。
 散歩からの帰宅後、玄関の門にルーシーをつないで自分は足ふきの用意をする。せっかく温まった体が冷えてしまうからと大急ぎでブラシやらペーパータオル等を用意して戻る。
 ルーシーはリードを目一杯伸ばして植え込みの中で丸くなっていた。タイルは冷たいらしく、そこで横になるのも、立っているのもツライらしい。ものの3分ほどの間なのに「寒い〜」と丸まっていた。
 「オマエの仲間は、寒い寒いスコットランドで朝も早よから働いてんねんで。寒いとか眠いとか文句は言わずに頑張ってんのに、なんやねん、オマエは〜!」呆れて思わず口から出てしまった。
 すると、ルーシーは植え込みで丸まったまま「だって、ここネパールよりも寒いですから」と言いたげに見上げていた。むぅぅ、さすがにネパールにはボーダーコリーはいないかもしれないなぁ。空気薄そうだし、岩だらけだろうし。・・・でも、いるのかなぁ?