ノンノちゃん

 朝、F公園でディスク練習をしようと思ったら、お友達のノンノちゃんに出会った。実は、彼女はとても面白い。意外性のあるワンちゃんなのだ。

 ノンノちゃんは、ルーシーが1歳くらいからの駆けっこ仲間なのだが、ラブの血が流れているせいか足が長く非常に俊足だ。一緒に走っていた頃、ノンノちゃんは興奮のあまり背中の毛が立ち、ガウガウ言っていた。短足ルーシーは駆けっこで負けるのが悔しいらしく、最近は「私はディスクで忙しい」と無視するようになったけれど。
 一方ルーシーと違って、母性のある優しいワンコでもある。コーギーのハチ君が育ち盛りだった頃、お相撲の相手をして「あ〜、ヤラレタ〜」と言うかのごとく、抱き合ったままで何回もコテンと倒れてみせた。ハチ君はコーギーとしても小柄だから、ノンノちゃんは子犬に合わせて遊んであげていたのだろう。ワンコと一緒に遊ぶのが大好きで、相手のワンコに合わせた遊びができる素晴らしいワンちゃんだ。
 普段は、お母さんやお兄ちゃんが、ノンノちゃんを散歩させていることが多い。昔から知っているルーシーに対してはそうでもないが、他のワンちゃんが、お母さんやお兄ちゃんに近づくのがイヤで、わざわざ間に割って入ろうとする。お母さんは声も優しいから、初対面のワンちゃんは「可愛がってくれるの?」と近づこうとする。すると、ノンノちゃんは唸ったり歯を剥いたりはせず、背中の毛を立て眉間にシワを寄せて「ダメ。お母さんは、私のもの」とズイっと前に出る。その表情は怒っているというよりは、困っているような感じ。元々、平和的なワンちゃんなのだ。相手を威嚇するのは苦手なんだろうね。思わず、側で見ていて吹き出してしまう。
 お父さんは週末になると、朝の6時頃から車でノンノちゃんをK公園に連れて行くそうだ。この時間のK公園には大型犬が集まっていて、駆けっこ大好きのノンノちゃんは、遊び相手に困らないそうだ。F公園の常連ワンちゃんは、走らない子が増えてきたから、ノンノちゃんもその方が楽しいのかも。
 この日はお兄ちゃんが散歩されていた。聞けば前日にバターを三分の一本も盗み食いしてしまったそうだ。しばらくして「リバース」したらしいけれど、お兄ちゃんは心配そうな表情を浮かべていた。本人は、見たところ元気そうだし、走りたそうにしていた。リードを離してもらうと、ルーシーに挨拶した後、(あ)のところへやって来て「何か美味しい物をチョーダイ」とねだる。食欲もあるようだから、運動させても大丈夫かな?
 ルーシーにディスクを投げ、ノンノちゃんに追いかけてもらって、水をたくさん飲ませることにした。摂りすぎた塩分を速く体外に出させないと。ノンノちゃんに追いかけられると、ルーシーはディスクを取った後、急いで戻ってくる。ルーシーも、マイペースでは遊べないから、スピードを上げる。ノンノちゃんも嬉しくなって走る。
 ルーシーが(あ)の手元に集中しながら地面に伏せると、ノンノちゃんもルーシーを見張りながら伏せるようになった。ルーシーにとってディスクは獲物で、ノンノちゃんにとってルーシーが獲物なのだ。
 やっぱ、ノンノちゃんは面白い。家族に愛されるワンコって、やっぱり面白いワンコなのだろう。