Big Black Dog Syndrome

 「そう言われてみれば」というハナシである。CNNによれば、米国の動物愛護センターが直面している問題のひとつは、世間一般に広がっている"Big Black Dog Syndrome"(黒い大型犬は攻撃的でトラブルの元だという先入観)なのだそうだ。彼らによれば、ラブ、シェパード、ピットブルやロットワイラーの血が入った黒い犬は、個々について性格が良く攻撃性がなくても、新しい飼い主が見つかりにくいらしい。
 実際に、あるロットワイラーの飼い主によれば、犬と一緒に町を散歩すると、彼らを避ける人は多いそうだ。わざわざ向かい側の歩道へ移ったり、子供を抱き上げたり。また、同じドッグウォーカーが犬を散歩させても、犬の大きさによって、周囲の人々の対応が明らかに違うという。濃い毛色の大型犬を連れている時、人々は犬に対して警戒するだけでなく、散歩をさせているウォーカー自身に対しても目に見えて緊張するらしい。連れている人間のイメージにまで影響を与えるとは、なかなか深刻である。
 ひとつは、文学や映画などに登場する黒い大型犬が、悪や暴力の象徴になっているからだ。ハリー・ポッターのシリーズもその一つで、子供に黒い大型犬の悪いイメージを擦り込んでいることになる。チャーチル首相は恐慌を"Black Dog"と表したそうだ。いずれにしろ、これじゃ良いイメージを絶対に与えないだろうな。
 二つ目の理由は、ルーシーにも当てはまるのだが、黒い犬は表情が読みにくいからだ。黒い顔に黒い目では、表情がわかりにくい。眉毛が見えにくく、怒っているのか大笑いしているのかが分からない。動物愛護センターでは、ネットで保護した犬を紹介しているが、黒い犬は写真うつりが悪い上に、暗い小屋やクレートの影で暗く見えてしまう。

※ BCRNの皆さん、保護したワンちゃんは、明るいところで写真を撮ってくださいね。

 アーカンザスのロジャーズという町で保護され、安楽死を迎えた14匹の中で、毛色の濃い大型犬は13匹に及ぶという。センター折り紙付きの優良犬でも、新しい飼い主を迎えるまでに半年もかかったケースがある。人間の持つイメージで犬の生死が決まるとは、それこそ恐ろしいことだ。それでも、これを払拭しなければ、さらに多くの黒い大型犬が哀しい運命を辿ることになる。
 またラブやピットブルなどは多産系(5頭以上)で、濃い毛色は優性遺伝だから、どんどん黒い大型犬の頭数が増える。まず、この点について対処しなければ、ならないだろう。そして黒い大型犬でも、性格が優しい子がいることをアピールしなくてはならない。ハリーポッターの影響力に対抗するのは至難の業だが、何もしなければ、黒い大型犬はアメリカ社会から抹殺されてしまうだろう。
 ボーダーコリーとしては小柄なルーシーでも、散歩中に出会う子供達全員に好かれている訳ではない。子供達に怖がられることもある。ルーシー自身は地面のニオイを嗅ぐのに忙しいのだけれど。
 今まで(あ)はリードを握った手を見せて「大丈夫よ〜。おばちゃんが捕まえているからね〜」と声をかけてきた。しかし相手が逃げないのであれば、ルーシーをオスワリさせて「この犬は人間の言うことを聞く」と理解してもらうのも重要かもしれないと思っている。