やりたいこと、やりたくないこと

 連日のハイキングから疲労がたまっているところに、急激な気温の上昇で、少々バテ気味のルーシー。夕食時のダンスの練習も、なんだか集中力が下がり、テレビの音声などに気をとられてしまう。集中を取り戻すように細かく注意をするが、どうも反応がニブイ。本人は「ちゃんと」と言われて、やっているつもりでも、動作を勝手に省略したり、コマンドを出されても、直ぐに動こうとしない。
 「ルーシー、ちゃんとやらないと、ご飯ナシだよ」と注意する。大抵は皿を下げられると心を入れ替えるのだが、昨日の晩は全然ダメ。バテバテで動けないらしい。それでもヨシとする訳にもいかず、結局、皿を下げたり出したりの繰り返し。得意な技から復習して褒め倒しをする。それでも苦手なところはストライキ
 ムカツキながら皿を見ると、ほぼ完食に近いところまで来ていたので「やらないのね。じゃ、もうあげない!」と皿を下げ、サークルに隔離して放置。普段ならホエイ水も与えるところだが水だけ。ちっとは反省してくれたら良いんだけど。
 問題は、本人が「やりたくない」と意思表示をした時、こちらがどう対応するかだ。ダンスに限ったことではない。本人のワガママが通ると誤解させないようにしないと。
 ルーシーがダンスを始めたのは、シツケの延長という意味もある。股関節不全なのに、運動不足だとストレスがたまり自分でハゲをつくるため、何か運動を長期的にさせたかったこともあるけれど。「飼い主のコマンドに従えば良いことがある、だから従おう」と思ってくれたらと考えていた。
 一方、ルーシー本人はダンス自体が好きではない。単に先生に甘えたい、おやつをもらいたい、それだけだと思う。運動としては、フリスビーの方が断然好きだろう。だけど股関節のことを考えると、積極的に取り組む訳にはいかない。
 ルーシー本人が一番幸せそうなのは、犬としての喜びを感じている時なのだろう。



 たとえばクーちゃんと遊んでいる時。昔はあらゆるワンちゃんに「駆けっこしよう。取っ組み合いしよう」と誘っていた。そのうち駆けっこや取っ組み合いの勝敗にこだわるようになり、自分が負けそうな相手には仕掛けなくなった。今では、相手はクーちゃんくらいなものだ。(本人の名誉のために言っておくが、クーちゃんは非常に強い。ただ精神的にルーシーよりもずっと大人なので、ルーシーにわざと負けてくれるのだ)
 ある飼い主さんから「犬同士を遊ばせていたら、シツケが入らない」と注意されたこともある。その方は(あ)のことを考えてアドバイスして下さったことは重々理解しているし感謝している。それでも、(あ)は止めさせたくなかった。あそこで止めていたら、ルーシーはもっと従順だったかもしれない。だけど、こうして遊んでいるルーシーは、本当に嬉しそうだった。散歩の帰り道でヘラヘラ笑顔を向け「今日もやってやりました」と、こちらを見上げる時、本当に幸せそうで「この楽しみを奪ってしまうのはどうかな?」と思ってしまったのだ。
 そういう意味では、今、あの時のツケを払っていることになる。他のワンちゃんと遊ばなくなるにつれ、ルーシーは(あ)の指示に従うようになってきた。とても皮肉なことだけど、大人になるということは、子供らしい良い部分を手放すことなのかもしれない。
 さてさて、どうしたもんかなぁ。先生は「犬には、ベーシック(基本訓練)もダンスも区別はつかない。全てきちんとやらせないと」とのこと。・・・仰るとおりなんですよ、ええ。
 だけど、何かまた良い部分を手放すことになるんじゃないだろうか。そう思うと、強い態度に出られない。どーも優柔不断でイカンなぁ。困ったもんだ。