ハイパー・パピー

 先週後半のハナシである。いつものように公園で遊んでいると、大型犬のパピーがやって来た。非常にフレンドリーで甘えっ子なのだが、いかんせんパワーが違う。華奢な飼い主さんは、突撃態勢のパピーに引きずられているようだ。
 ルーシーもそうだったけれど、パピーは外に出るとハイパーになる。見る物、嗅ぐ物、周囲のすべてが刺激で、興奮は最高潮になったようだ。そのせいかどうかは分からないが、他のワンちゃんのボールを食べてしまった。
 ボールは直径5センチ程度のピーピ・ーボールで、パピーが到着する前に、他のワンちゃんが遊んでいた。そのワンちゃんは遊び疲れて、一休みしていたところ、興奮度MAXのパピーちゃんがドドドとやって来て、地面に落ちていた口に入れてしまった。
 どうも大型犬は、口が大きいせいか、ボールを奥の方に入れてしまうようだ。このパピーちゃんは、後からきくと、以前も危険な目に遭ったらしい。その時は他の物で注意を引いて、ボールを取り上げることができ、なんとか未遂で終わった。ところが今回は、危険に気が付いた周囲の飼い主達が、慌てておやつを取り出して、取り上げようとしたが、これが逆効果になってしまった。つまり、パピーは「おやつも欲しいけど、ボールも取られたくない」一心で、ボールを急いで飲んでしまったのである。パピーの飼い主さんは、青くなった周囲の飼い主さん達に促されて、直ぐに病院に行った。
 異物を飲み込んだ場合は、異物が胃にある間に吐き出させるのが一番重要だと聞く。この手の事故(確信犯的犯行?)は珍しくないそうで、吐き出させる方法は病院によって違うようだ。ちなみにN先生は、嘔吐を誘発する注射を使うし、M病院では飲み薬を使う。(ちなみに「注射は効かない」という飼い主さんもいれば、「あそこのワンコは注射で毎回出している」という飼い主さんもいる)で、これでも出なかったら開腹手術となる。そうなると麻酔をしなければならないから、その前になんとかしたい。
 このパピーの場合は、レントゲン撮影の後、注射をしたところ、出てこなかったらしい。先生は、レントゲンの画像を見て「あ〜、(ボールが)入ってますね。ここに入っているのは石ですね。砂も入っているみたいだ」と仰ったそうだ。パピーちゃんが食べていたのは、ボールだけではなかったらしい。
 2日ほど様子を見たが吐き出しそうもないので、結局、開腹手術。週末を動物病院で過ごしたそうだ(パピーだから、容態が急変することも考えられたので、要観察と判断されたのだろう)。しかし翌日には、元気になっていて、久しぶりに出会った時には、変わらぬハイパーぶりで(あ)に飛びついてきた。周囲の成犬達は「エライ興奮しとるなぁ〜」と尻込み・遠巻き状態(笑)。マロ君のお姉さんが優しく話しかけたら、少しずつ落ち着いてきたが、次の瞬間には雑草を食べていた。このままでは、そう遠くない将来、また開腹手術を受けることになってしまうぞ。
 見かねた(あ)が慌てて「ダメ!また病院に行きたいの?」と叱ると、パピーは注目を受けたことに興奮して飛びついてくる。そうなのだ。犬には良いことで注目されているのか、悪いことで注目されているのかが分からない。理由は何にしろ、注目を浴びることは嬉しいことなのだ。こっちは叱っているつもりでも、相手に伝わっていない。お腹を切ったばかりだから、「アウト」の練習をして、ご褒美におやつやフードを与えることもできない。う〜む、どうしたものやら。
 「あの〜、余計なお世話ですが、ジェ○トル・リーダーという引っ張り癖の矯正用の器具があるんですけど」と申し出てみる。
 「あ〜、口にはめるヤツですね」
 「そうです。ウチの引っ張り癖の矯正には効かなかったですが、マズルをコントロールできるから拾い食いの抑制になるかもしれませんよ」
 手術は成功して、今のところ経過は良好。現在、痛み止めを飲んでいて、抜糸の予定は来週とのことだ。一方、本人はすでに元気いっぱいである。それだけでも良かったと言うべきか。