褒めること1〜”DON’T SHOOT THE DOG!”

(あ)が今、一番改善したいのは「褒め方」である。どうも褒めるタイミングが、まだまだ遅いらしい。今までルーシーには、いくつかのトリックを教えてきたが、コマンドも動作も理解しているのは、ほんのわずかだと思う。頭の中でコマンドと動作が必ずしも一致していないので、今まで何回もやってきたことでも失敗することが多い。失敗すると、慌てて「アレですか?コレですか?」と習った技を全て披露して、なんとかフードをもらおうと必死になる。

 褒め方が悪いと、犬は、なぜ自分が褒められたのかが分からない。分からなければ、正しい動作を強化することができない。たとえばオスワリを教えるとしよう。飼い主が「良い子」と褒めるまでに犬が立ち上がってしまったら、強化されるのは「立ち上がる」ことになる。この本によれば、褒めるタイミングは、いつもその動作の最中でなければならない。以前お世話になったN先生は「犬によって違うけれど、通常はお尻が下がり始めた瞬間に褒める。早いタイミングの子に対しては、頭の中で『座ろうかな』と思った瞬間に褒めてあげても良いくらい。」とのこと。

 ところが、これをそのまま応用して、上手くいかないこともある。例えば、アラウンドを教えていた時のことだ。ルーシーがツイテの位置から(あ)の正面へ動き出した瞬間に褒めると、その時点でルーシーは立ち止まり「終わり?じゃあ、おやつチョーダイ」と訴える。完了するまで褒めるのを待つと、ツイテの位置に戻ることを強化してしまう。結局、今(あ)がやっているのは、動き出した瞬間に「そぅそぅそぅ」と言い、ツイテの位置に戻ったら「グッド」と声をかける二段階の褒め方だ。1つの動作に、コマンド+二段階の褒め言葉+終了の合図(「OK」)が必要で、ダンスを一曲踊る間に喋りまくり、疲れてしまう。

 青空ちゃんの場合は、「アラウンド」と一声かけると、先生が次に声をかけるまで何回もグルグル回る。最初の教え方で、止められるまで同じ動作を繰り返すように教えたからだそうだ。どこで褒めるのかと思って見ていたら、あまり褒め言葉は出てこない。動作の最中に「良いよ、良いよ」くらいなものだ。確かに青空ちゃんはアラウンドが得意だ。だから褒める必要もないのかも。しかし全体的にモチベーションの低いルーシーの場合には、声をかけて、こちらの指示に集中させなければならない。やはり犬の個性が問題なのだろうか。

 本の中で、動物園のゴリラを屋外の広場に出す話が紹介されていた。このゴリラは、屋内の檻を掃除するために、屋外の広場に出そうとすると、ドアのところに座って動こうとしない。そこで、飼育員は屋外に食べ物を用意し、バナナを振り回してゴリラを誘っていた。ところがゴリラは、これを無視するか、食べ物を奪い取って急いで屋内に戻ってしまう。トレーナーに言わせると「まだ起こっていない動作を強化しようとしているだけ。つまりワイロだ」とのこと。正解は「ドアのところに座っているゴリラを無視して、自分の意志で屋外に出てきたところを強化しなければならない。」とのこと。なるほどね〜。「美味しいおやつをあげるから、○○しよう」と誘うのは間違いってことか。しかし、これは気が長くないとできないなぁ。