褒めること2〜”DON’T SHOOT THE DOG!”

 ルーシーにクロス(伏せの状態で、前足を組む技)を教え始めて2週間。手足を触られるのを嫌なルーシーも、なんとか(あ)に片足を押さえられることに慣れてきたし、そうされたら、自由な方の足を動かすことも理解してきたようだ。それでも、なかなか両足をキレイに組むことができない。練習中、ルーシーはこちらの顔ばかり見ていて、自分の足がどんな状態かを見ようとしない。クロスで両足をどんな状態にすれば良いのかが理解できていない。ここからはクリッカーを使って練習した方が良いかも。
 実は、(あ)はクリッカーを使いこなせていない。(何もかも中途半端だけれど)ルーシーは、クリッカーの音がすることは、ご褒美をもらえることだと理解している。前にも書いたけれど、二段階で褒めるので、二回目には口で「グッド」と言うか、ご褒美(フード)を与えるかしなければならない。ハンドシグナルを出してフードを与えると、両手が塞がってしまうので、結局クリッカーを手にすることは少ない。
 本によれば、クリッカーは、まず「ハンドラーが求める動作」をきちんと相手に伝える意味がある。次に、相手が正確にその動作を再現した場合、「今、君がやっていることは正しい」と「ご褒美がもらえるよ。」という二つの意味を伝える。
 ルーシーも、そこまでは良いのだ。ただし、クリッカーの音がした段階で、動作を止めてしまう。クリッカーの音は「終了〜、おやつ〜」だと理解しているらしい。とんでもなく自分に都合の良いヤツだが、クリッカー1回につき、一回のご褒美と理解しているようにも見える(笑)。
 確かに、そういう教え方もあるようだ。けれど特定の動作を連続させる場合には、一回一回コマンドを出し、褒め、フードを与えるのか?そんなヒマはないではないか。
 ジャーマン・シェパードの警察犬訓練では、クリッカーを「今、君がやっていることは正しい」と「今、やっていることを続けなさい」という意味で使うそうだ。(それとは別に終了のシグナルも必要になる訳だけど)
 たとえば、アジリティの競技会では、ハンドラーは犬に対して、次にどの障害に行かなければならないかを、全速力で走りながら伝えなければならない。『私は、犬がある障害をクリアした時、目に見えて混乱している様子を見たことがある。まるで、ハンドラーの指示がはっきりと聞こえないような素振りを見せた。次はトンネル?それともハードル?犬の頭が前後に動き、辺りを見回す。犬がハードルを見た瞬間に、ハンドラーが「イエス!」と叫んだ。犬は瞬時にダッシュして、正しいコースを走った』
 こういう時の強化物は、クリッカーの音であろうが、「イエス!」と叫ぶことであろうが、希望的な観測や「ガンバレ」と伝えるものではない。そのような強化物の与え方は、犬の集中を削ぎ、間違った行動を強化する可能性が高いという。つまり、もっと具体的にハンドラー側の指示を伝えないといけないそうだ。そういや自分も昔は「惜しい!」と思った時にも、ルーシーにおやつを与えてしまっていたなぁ。・・・反省。
 また、面白い話が紹介されていた。イルカにジャンプを教える上で、成功したからと1回ずつ魚を与えていたら、一回一回のジャンプが低くなり、なおざりになってしまうそうだ。そこで魚を与えるのを止めると、イルカは急にジャンプをしなくなってしまう。しかし、相手がジャンプして魚をもらうことを覚え、1回目、3回目とランダムに魚を与えたら、その動作は、より強く定着する。ご褒美を与えられない場合の方が、一生懸命にジャンプするようになる。次に「良いジャンプ」だけを選んで、魚を与える。そうすることでジャンプ全体の質を良くするそうだ。
 ただし、このやり方が使えるケースには例外があるそうだ。それは、難問やテストが絡む物である。高度な服従訓練の臭気選別など。このような場合、犬には毎回成功させなければならないとか。
 クロスでもう一回クリッカーを使ってみるか。すでに右腕はひっかき傷だらけ。ガンバレ、私!!