ハンド・パワ〜!

 (あ)の仕事仲間には、肩こり・腰痛・腱鞘炎が蔓延しており、一種の職業病になっている。忘年会は決まって座敷のある飲み屋。会の最後あたりは、テーブルを片付けて、みんなで並んで按摩セッション。ジャングル風呂の宣伝かと思うような光景が広がる。
 仲間の中で(あ)は、ツボ探し名人と呼ばれている。相手の身体を見て触ってみると、血流が滞っているところが分かるので「ここ、揉んでみたら?」と相手にアドバイスするのだ。ツボを探しておきながら、なんで揉んでやらないかというと、指の力が弱いからで、昔、友達を揉んだところ、こちらの腕の筋がつったからだ。それほど相手の肩こりが手強かった訳なんだけど。
 ちなみに、ルーシーが我が家に来てから、(あ)は歩くことが多くなったせいで、肩こりが減ったような気がする。仕事や(た)にムカツクことがあったら、「ほりゃあ〜!!」と力任せにフリスビーを投げてストレスを発散しているからかも。ただし腰痛は酷くなった。週一でサ○ンパスを貼りまくり、耳なし芳一になっている。
 子犬の頃、ルーシーは身体を触られるのを嫌がった。頭を撫でようと手を出すと、サッとかわす。褒めるときに、身体をポンポンと軽く叩くと、「ん?」と少し警戒して、顔をそちらに持っていってしまう。身体を触ることは、ルーシーにとっては褒めたことにならないので、結局ご褒美はおやつ。我らは、なんともドライな関係を築いてきた訳だ(泣)。
 それが、いつしかルーシーは、自分から「撫でて〜」と来るようになった。身体のどこを触ってもOKではないし、本人がリクエストしていないのに、こちらが手を出すと唸る。おまけに、向かい合ってマッサージをされるのは、あまり好きではない。かなりワガママな客である。それでも「撫でて〜」と訴える回数は着実に増えている。
 (あ)が散々マッサージをさせられた後で「ハイ、おしまい〜」と言うと、ルーシーは非常に慌てる。こちらに背中を向けて、慌ててオスワリをして「今度は背中を揉んで」というのである。そこで「ルーシー、また後で」というと、今度は(あ)の足や膝の上に座って、立ち上がらせないようにする。そんなに、私って上手いのかしら?
 マッサージの本も購入して読んだから、疲労してケアが必要な部分は、ある程度理解している。しかし、(あ)が買った本には「マッサージの仕方」は書いてあっても、ツボまでは書いていない。ツボは、やはり飼い犬を揉んで探すしかない。
 人間同様、犬も首筋、肩胛骨、腰は疲れるので、大体の場合、手のひらで優しくマッサージをすると喜ぶ。耳の後ろ、胸、耳と顎の間辺りを揉むと、ルーシーはヘラヘラと笑い出す。人差し指と中指を二本合わせ指の腹を使って、足の膝から下で内股の部分を優しく押したり(上に向かって)、両手を開いた状態で両方の大腿の外側を包み込み、膝から股関節に向かってゆっくりと撫でる。ただし、絶対に骨に力を加えたり、指を立てたりしてはいけない。あくまで力を一点に加えないことが大切だ。
 ちなみにルーシーが一番好きなツボは、前足の脇の下である。