カンベンしてよ

 水曜日に(た)の叔母の通夜で夕方出かけることになった。色は黒白だけど、ルーシーを連れて行くことはできないので、家で留守番。通夜が終わって帰宅したのは10時過ぎ。慌ただしく家を出たため、家の中は真っ暗。カギを開けて玄関の電気を付けたら、ルーシーが目をぱちくり。こういう時は、ワンコのお迎えが嬉しい。
 翌朝、庭で水まきをしていたら、隣家のおばあさんがやって来て「昨日、何回か連絡しようと思ったんだけど、今日、植木屋が消毒作業をするんですよ。」あらかじめ連絡してくださったことに感謝しながら、困ってしまった。作業は夕方とのことだが、猛暑日が続いている。屋外で3時間をつぶすには車が絶対必要だ。それも我が家の車でなければならない。
 本葬が終わって(た)が帰宅する時間を考えると、それでは間に合わない。車を返してもらわなくては。急ぎ(た)に連絡して、本葬が始まる前に車を返してくれるように頼んだ。一方、本人は「斎場への送迎に使うから」と言う。事情は分かるが、斎場への送迎はタクシーでも良いではないか。ルーシーを乗せるには、我が家の車かペットOKのタクシーを手配しなくてはならない。(あ)には、ペットOKのタクシーが、ここらへんにあるのかさえ、分からない。我が家の車を使うのであれば、(た)も親族の一人として本葬で準備があるだろうから、直ぐにでも車で一旦帰宅してもらわなくては。ところが、電話口で(た)は依然グズグズとした態度である。「もう良い!こっちでどうにかするから」完全にブチ切れた。
 とはいうものの、さて炎天下で3時間をどうつぶすか。自宅から歩いて行ける距離に、果たして、そんな場所はあるのか?ほとほと困ってしまった。困った時のピーママ頼み。ご託宣をいただくべく、連絡してみる。
 ピーママさんは、2つほど案を出してくれた。持つべきものは、妻の窮状を歯牙にもかけないバカ亭主ではなく、面倒見の良い親切な友達だ。おまけに「今日は、アジに行くから、途中まで車で送っていってあげるよ」受話器を握りながら、ジワっと涙が出た。とりあえずの時間を決めて、それでも植木屋に何時頃に消毒するのかを直接確認するからと、電話を切った。
 2時半になって、作業中の植木屋にたずねたら「5時か6時になる」という。それなら、普段の散歩よりちょっとばかし早いくらいだから、ピーママさんの手を煩わす必要もない。再度連絡をして、5時ちょっと前にルーシーを連れて家を出る。
 2時間をなんとかつぶして、ヘロヘロになりながら家に戻ったところ、隣家のおじいちゃんに呼び止められた。「いや〜、いつもすんませんなぁ。」「実は、植木屋が今日はどうしても都合が悪いとか言って、消毒作業も掃除もしないで帰ってしもたんやぁ。」「それで、明日の8時か9時までに絶対消毒するからって言うとったんやけど」
 「カンベンしてよ〜!!!!」
 思わず大声で叫んでしまった。すると、おじいちゃんは「そうやろ〜!!」おじいちゃんは、植木屋が掃除をしないで帰ってしまったことに怒っていたようだ。
 頭も身体も正常を失った(あ)は、ピーママさんに電話。さんざん愚痴を聞いてもらって、今度は朝の8時から3時間をつぶす良い場所はないかと相談(爆)。
 で、翌朝はA公園へ。ルーシーは車に乗れたしルンルン気分。連日の長時間散歩でフラフラの(あ)は、こいつのお気楽ぶりは、つくづく植木屋商売の気楽さに匹敵すると思うのだった。

 川を見ると「入って良い?」と訊いてくる。ルーシー、これ以上、お母さんを疲れさせないで。頼むから、カンベンしてください。
ピーママさん、お忙しいのにアホな相談に乗ってくれて、ありがとうございました。