平常心はどこに行った!?

 昔、職場では「かなりの男前」と言われた(あ)だが、人前に立つのは、全く苦手。おまけにルーシーと一緒となると、アップアップして、自分はもとより周囲も冷静に見られなくなる。墓穴を掘って、ルーシー共々穴にはまるパターンばかり。そして、その後は、おきまりの自己嫌悪タイムが待っている。
 ペット博でチャイナシンドロームばりの墓穴を掘り、2週間近く即神仏になって(あ)はしみじみ考えた。これじゃ、ルーシーがどんなに頑張ってダンスが上手くなったとしても、こっちが足を引っ張ってしまう。しかし、どうしたもんかいな?
 という訳で、ご近所で開催されたNDAの大会で、当日になって自分もエントリーしようと考えた。平常心養成の修行である。ディスクを握ったのは、8月の負傷以来、1回か2回程度。な〜んも練習してない訳だから、結果は期待する方が間違い。だから、な〜〜んの気負いもなく、スタートラインに立てるはず・・・だった。
 (た)も当日エントリーだったから、ルーシーは休む間もなく走ることになる。そのことをスタッフに伝えたら、親切に「じゃあ、ノービスの最後に回します」と配慮して頂いた。競技は、当日エントリーのペアを皮切りに、事前エントリーのペアが出場し、その最後に(あ)とルーシーが出るはずだったのだ。
 まず(た)とルーシーの出番。「ゴー!」の合図でルーシーはコートの中に入り、例のごとく(た)の方を向いて地面に伏せた。偶然投げたディスクがルーシー正面。ルーシーは、その場でガバァと立ち上がってキャッチ。会場の笑いをとる。その後は、失敗があったにしろ、なんとかポイントを上げて終了。制限時間1分の中で、余裕をもってルーシーに合わせたペースで遊べたようだ。
 1Rで(た)の試技が終わり(あ)の出番までしばらく時間があるだろうからとクレートに入れたところでMCから自分の名前を呼ばれる。大勢のペアが、いろんな種目に出場するのだ。係の間に、こういう行き違いがあっても、しかたがない。ともかく、慌ててルーシーを連れてスタートラインへ。
 かなり動揺してしまったのは確かだが、スローは競技開始前の練習よりも悲惨。とんでもない方向に投げまくり、全てエッジアウト。1Rと2Rでは、スタートラインが変わる。風の方向が変わるから、ディスクのコントロールが、ますます難しくなる。向かい風が苦手な(あ)としては、1Rで上手く投げておきたかったのだが、後の祭りである。
 2R目は、競技開始前の練習からダメダメ。なんとかコース内に投げられたとしても、地面近くに高度を下げたところで、向かい風に煽られてディスクが流れて行ってしまう。コントロールは無理だから、短く確実に前に投げようと決める。
 本番を迎えてコートに入ったところ、出番を控えた他のワンコが乱入。ルーシーに「行かないよ」と注意して、自分の側に座らせる。あ、私って、案外冷静じゃないかい?
 ところがMCの「よろしいでしょうか?ではレディー、ゴー!」の言葉を耳にした途端、力が入ってしまったらしい。バドママの言葉を借りると「MC席に突き刺さるスロー」。MCの「まだ力が入ってますね」の声を聞きながら、慌てる自分にさらにアップアップしてしまう。エッジアウト連発。ルーシーともかみ合わず、お互いに全く良いところナシで終了。
 平常心は、一体どこに行っちゃったんだろう?あんなに一瞬で緊張するなんて。後になって、自分の魂胆を(た)に伝えると、大笑いして「そういうことだったら、ボクはハナから『やめとけ』って言ったと思うよ」だって。お気楽な(た)は、そんなに練習していないはずなのに、冷静に投げて、まさかの入賞を果たしていた。なんでや?!
 う〜〜ん、来週はりぶらぶを控えている。大丈夫なのか、本当に?