ピー太とルー吉

ピー太は、生来の働き者で皿追いに精を出し、最近では南蛮渡来の自由型5枚皿追いに挑戦するほどの腕前に成長していた。一方のルー吉は、相変わらずの気分屋で、おっ母がたまに皿を投げても、側で誰かが見ていないと持ってこない不精者じゃった。
 身の程知らずのルー吉は考えた。「ワシはやっぱり皿追いが好きじゃ。まぁ、誰かが側にいて『ルー吉、ガンバレ!』と励ましてくれれば、ワシもやる気を出すんじゃが。」ルー吉は、不精者のクセに、目立つのが好きというワガママ者じゃった。

 ある日、ルー吉とおっ母がいつもの寄り合い場所(公園)へ行くと、ピー太とおっ母さんと出会った。働き者のピー太は、早速皿追いを始めた。ルー吉のおっ母は皿投げもヘタクソじゃったが、ピー太が難しい皿も取ってくれるので、ピー太に鍛えてもらうことにした。ルー吉は、ピー太がうらやましくなった。村の衆(他のワンちゃん達)は、ピー太が皿を次々に捕まえるのを、口を開けて見ている。もちろん、ピー太が頑張って皿を追いかけているから、皆が注目しているのじゃが、不精者のルー吉は「ワシは皿を追いかけなくても、ピー太にくっついていたら、ピー太と一緒に注目してもらえる。」と考えた。

 ピー太が皿を獲ると、ルー吉は喜んでクルクルと周囲を回り「獲ったど〜!」と、まるで自分が獲ったかのように、得意げに走るのじゃった。気の優しいピー太は「獲ったのはワシだけど、まぁ良いか」と放っておいた。それでもルー吉が、自分の皿を横取りするのではないかと思い、しっかり皿をくわえて走った。ピー太が「ルー吉、なんでクルクル走るんじゃ?」と尋ねると、ルー吉は、素知らぬフリをして「なんでかなぁ。これが気持ち良いんじゃ」と答えた。

おっ母さん同士の立ち話が長くなると、働き者のピー太は、イライラしてきた。「なんじゃ、ヘタクソに付き合ってやったのに、もう終わりか。つまらんのう。誰か他の村人(ワンコ)は来ないものか」
 すると、バー兵衛とジャス太郎とおっ母さんがやって来た。二人のおっ母さんは、早速皿を出して投げてやる。ところが、バー兵衛とジャス太郎は、普段、別の仕事で忙しく、友達と会う機会が少ない。ジャス太郎は、旧友ピー太との久しぶりの再会に興奮して、皿には目もくれず、飛び跳ねるばかり。ピー太は「これが、おモニじゃったらなぁ」と思った。おモニは、バー兵衛とジャス太郎の妹分で、三人の中では一番皿追いが上手なのだが、ピー太がいつもからかって遊ぶ相手じゃった。
皿追い上達者のピー太は、自分の皿を追いかけるのも好きじゃが、他の村人の皿を盗るのは、もっと好きじゃった。相手が、自分の皿を追いかけるのに真剣であれば真剣なほど、ピー太は、そちらの皿が欲しくなる。それでも、一つの皿をめぐってケンカになるのは良くない。ピー太は、自分の皿をくわえて周囲を走り、じっと待つ。そして相手が皿追いに疲れた頃を狙って、盗りに行くのじゃった。

 この日もピー太は、バー兵衛の後ろに控え、時折周囲を走りながら、バー兵衛が皿を投げてもらっているのを見つめていた。ところが、バー兵衛は皿に執着せず、嬉しくて飛び跳ねるばかり。いつまで経っても、ピー太が満足する鍛錬はできなかったということじゃ。
【教訓】他人に頼らず、自分で自分の皿を追いかけよう!


ピー太「バー兵衛!早く皿を獲れよ!日が暮れちゃったじゃないか!!」