選択肢

 よく公園で出会うワンちゃんが、先週、股関節の骨頭手術を受けた。家に迎えられる前から、飼い主さんは「この子は絶対足が変だ」と思っておられ、後に専門医に診せたところ、手術を勧められたそうだ。
 大きくなるにつれ、後ろ足が極度に内股になり、疲れると飼い主さんに寄り掛かって立つようになった。走るときは、ウサギ跳びのように両足を揃えて走る。ディスク等の運動が好きだし、大型犬ということもあって、患部にかかる負担は大きい。今は元気でも傷んだ箇所は戻らない。高齢になれば、多かれ少なかれ関節痛が出る。
 飼い主さんは、このワンちゃんに手術を受けさせる必要があると、自分でも重々分かっていたし、専門医にもそう勧められていたけれど、直ぐに決心できなかったという。どんな手術でもそうだが、手術にリスクはつきものだからだ。
 また(あ)が聞いたところでは、股関節の一方が傷むと、それが手術で完治したとしても、もう一方も遅かれ早かれ傷むらしい。骨頭を削ることで左右のバランスが狂うからか、手術した足を無意識にかばうからか。いずれにしろ、手術をしても一回の手術で済むことは少ない。そして股関節の両方を手術するには、大型犬の場合、回復まで6ヶ月近くかかる。長期にわたり行き届いたケアが続けられるかどうか、自信がなかったという。 
 手術を決心させたのは、このワンちゃんが後半身を動かすと、コキコキという音が聞こえるようになったこと、3歳を迎え、これ以上時期を逃すと、術後に落ちた筋肉を今の状態まで取り戻すのは、大変になるかもしれないと考えたからだとか。 
 今日の夕方、このワンちゃんは公園にいた。右側の股関節の手術を無事終えて、退院した日から歩いているという。驚いて目を丸くする(あ)に「私もどうかと思ったんだけど、先生に『帰ったら、直ぐにどんどん運動させてください』って、言われたのよ」と飼い主さん。さすがに階段は無理なので、スロープを選んで歩いているらしい。「でもね、今日はボール遊びもしたしね。やっぱりテンションの高い子は回復が速いみたい」
 聞けば、骨頭だけでなく骨盤も傷んでいたので、両方を削ったそうだ。その本人が、飼い主さんの横に立ち、嬉しそうな表情で立っているのを見ると、つい先日、そんな大手術を受けたとは思えない。凄い回復力だ。
 今のところ発症はしていないと言われているけれど、ルーシーも股関節形成不全である。だから他人事とは思えず、この飼い主さんにお話を伺ってきた。股関節を傷めるのは、ディスクばかりではない。歩いていても、傷める時には傷めるらしい。ずっと爆弾を抱えているようなもので、そう考えると、爆弾自体を消せたらと思わないでもない。
 ずっと爆弾を抱えながら過ごすのは、精神的に辛い。昔ならいざ知らず、今ではルーシーもディスクが好きだ。思い切りディスクをさせてやりたいなぁ。まだ現実としては考えられないけれど、笑顔のワンちゃんを目の前にしていると、手術という選択肢もあるかもしれないと思った。発症もしていないのに、おかしいんだけどね。